先日、憲法学界の重鎮というべき権威ある学者の講義を拝聴する機会に恵まれた。
印象的だったのは、他のあらゆる難題に明快かつ説得力のある説明をされていたこの学者が、質疑応答の中で出てきた政府が唱える旧宮家の「養子縁組」プランの合憲性への疑念についてだけは、(あらかじめ想定できた質問だったはずなのに)ほとんどシドロモドロになってしまい、遂に筋の通った回答を提示することができなかった事実だ。
わずかに、憲法第2条に規定してある「世襲」が男系による継承を要請しているとすれば、これは憲法上の要請だから、第14条の例外として(その要請に応える為の)養子縁組は認められる―という独自のロジックをちらりと示されたものの、講義の中で憲法の「世襲」は“皇統に属する子孫による継承”以上のものは要請していない(つまり男系でも女系でもよく、男子でも女子でもよい)ことを詳しく説明されていた(それが学界の多数説であり、政府見解でもある)ので、そうした言い分は残念ながらご自身の論理に照らして成り立たない(だからご本人も強くは打ち出しておられなかった)。
以前、同じく憲法学者の百地章氏が唱えられる養子縁組プラン弁護論が、とても支持できないことを述べた(拙著『「女性天皇」の成立』67~69ページ、令和4年1月30日のブログ「旧宮家系男性“養子縁組”プランはやっぱり『門地による差別』」など)。
この度、頭脳明晰な学界の権威者が結局、合憲論を組み立てられなかった様子を拝見して、養子縁組プランは「門地による差別」で憲法違反との確信を一層強めた。
追記
朝日新聞の月刊誌「Journalism」4月号の特集は「皇室は持続可能か」(4月8日発売)。拙稿も掲載されている。
「旧宮家系男性“養子縁組”プランはやっぱり『門地による差別』」
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