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「女性宮家」を巡る初歩的な整理

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 1 分前
  • 読了時間: 3分
「女性宮家」を巡る初歩的な整理

寛仁親王のご長女、彬子女王殿下が三笠宮家の当主の地位につかれることが、

9月30日の皇室経済会議において認められた。


併せて、同会議により、信子妃殿下が当主になられる「三笠宮寛仁親王妃家」という新しい宮家も立てられる事になった。


これについて質問が届いているので、ここでごく初歩的な整理をしておきたい。


先ず政府は「宮家」は独立して一家をなす皇族の呼称であって、法律上の制度ではない、という説明をしている。だが、呼称そのものに法律上の根拠はなくても、皇室経済法の規定を見ると、実態として「宮家」という生活単位を予定していることが分かる。


皇族費の支出の仕方が当主=定額、当主の配偶者=定額の2分の1(但し夫を失って宮家の当主になった場合=定額)、その子=未成年10分の1、成年10分の3というルールになっている(第6条第3項)。その意味では、宮家は明らかに法的根拠を持つと言うべきだ。


誰が宮家の当主になるのか。

それを決めるのは、先ずは当事者の意思による。

その上で、衆参正副議長、首相、財務大臣、宮内庁長官、会計検査院長で構成される「皇室経済会議」の同意を得ることによって最終的に決定する、という順序だ(同条第2項、第3項第2号)。


該当条文には「皇室経済会議の議を経ることを要する」とある。「議により」でなく「議を経る」となっているのは、会議側が「発議権及び決定権」を持つのではなく、「他に成立している行為について…承認乃至(ないし)同意を与へその他これに関与する場合」(法制局「皇室典範案に関する想定問答」)に当たるからだ。


つまり、当事者の意思が先行し、皇室経済会議がこれに同意する、という流れであることが分かる。


では、「女性宮家」とは何か。普通に考えると、これまで一般的に宮家と言えば男性皇族が当主だから、それと区別してわざわざ女性宮家と呼ぶなら、それは“女性皇族を当主とする宮家”、という理解になるだろう。


しかし、少なくとも上皇陛下のご譲位を可能にした皇室典範特例法が可決された時の附帯決議にある「女性宮家」という語は、そのような広い意味では使われていない。何故なら、そこでは将来的な検討課題として、「女性宮家の“創設”」が挙げられていたからだ。


高円宮が亡くなられたのは平成14年だった。だから同決議の時点(平成29年)では、当然ながら高円宮家のご当主は久子妃殿下だ。女性皇族が当主の宮家が即ち女性宮家なら、将来的な課題ではなく、既に目の前に存在することになる。なので、決議における女性宮家は、それとは違った内容になる。


そこでの「女性宮家」は、あくまでも皇位継承問題に関わる課題と位置付けている。

よって、以下のように理解すべきだろう。

現在の未婚の女性皇族が婚姻と共に皇族の身分を離れられるルール(皇室典範第12条)を変更し、「内親王·女王が婚姻後も皇族の身分を保持されて、独立した宮家の当主になられる」場合、

その宮家こそ“女性宮家”に当たる、と。


従って、三笠宮家も新設の三笠宮寛仁親王妃家も、一般的な意味では女性宮家と言えるかも知れない(その場合、三笠宮家は崇仁親王が亡くなられて百合子妃がご当主になられて以降、女性宮家と言える)。


だが、皇位継承問題を巡る検討課題としての女性宮家には該当しない、という評価になる。


但し「女性宮家」という呼び方は、あくまでも過渡的なものであって、それが創設された暁には、もはやスタンダードな存在であり、ことさら男性皇族が当主の場合と区別する必要もないので、久子妃殿下が当主になられてからの高円宮家や百合子妃が当主になられてからの三笠宮家が特別視されなかっように、普通に宮家とだけ呼べばよいだろう。


なお皇族費について、独立宮家の当主たる内親王は定額の2分の1(女王は更にその10分の7)に

減額されるという皇室経済法のルールは、今や時代錯誤と言う他ないだろう。



▼追記

プレジデントオンラインの連載

「高森明勅の皇室ウォッチ」は10月2日に公開された。




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