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  • 執筆者の写真高森明勅

退位の儀礼を巡る迷走

退位の儀礼を巡り、安倍内閣が“また”迷走している。

やっと、天皇の国事行為として行われる「方向」、との報道。 改めて検討するまでもない。

当たり前の事だ。 今まで何をやっていたのか。

退位の儀礼は、新しい天皇のご即位に伴う 「剣璽(けんじ)等承継の儀」に対応する。

後者は、昭和から平成への御代替わりの際に、 既に国事行為として行われた。

ならば、 退位の儀礼も国事行為でなければ、 両者のバランスを欠く。 それ以前に、毎年、三権の長らが天皇に 新年の祝賀を申し上げる「新年祝賀の儀」が 国事行為として行われている。 毎年の新年のご挨拶すら国事行為なのに、 天皇が皇位そのものから退かれるという、 それより遥かに重い意味を持つ儀礼が、 国事行為から外されるという選択など、 初めからあり得ない。 首相官邸は大丈夫なのか。

それに絡んで、退位の儀礼と剣璽等承継の儀との兼ね合い (同日か、別の日か)が論点になっているとか。

しかし、報道のように、 もし退位の儀礼を4月30日に行うなら、 剣璽等承継の儀は5月1日になる。

それ以外にない。


自明すぎて「論点」にはなり得ない。


剣璽等承継の儀は、 皇位のしるしの神器(じんぎ)を受け継ぐ儀礼。

神器は「皇位と共に」あるのが大原則。

従って、今上(きんじょう)陛下が 平成31年4月30日午後12時まで在位される以上、 かつ皇太子殿下はその“瞬間”まで即位されていない以上、 それより「早く」神器が移るような事は、 決してあってはならない。

従って、剣璽等承継の儀は5月1日に行われるのが当然だ。

ちなみに、今上陛下のご即位の際は、 昭和天皇が昭和64年1月7日午前6時33分に 崩御(ほうぎょ)された後、 午前10時から剣璽等承継の儀が執り行われている。 即位そのものは、先帝崩御の「同じ瞬間」。

しかし、当たり前ながら、 儀礼の執行には避けられないタイムラグが生じる。

だが、以前も「事実と儀礼」の関係について説明したように、 それ自体は問題にならない。

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