平成26年5月21日、天皇陛下には(いわゆる“私的なご旅行” つまり陛下ご自身のお気持ちによるご旅行として) 栃木県佐野市を訪れられ、現地の郷土博物館に赴かれた。
そこで、足尾鉱毒による被害を明治天皇に訴えようとした、 田中正造の直訴状の現物をご覧になった。 明治天皇には遂に届かなかった直訴状。
それを、陛下の方からわざわざお足をお運びになって、 直接ご覧になったのだ。
更に、今も鉱毒被害への対策(植樹による緑化)が 続けられている現地の様子も、ご自身の目で確かめられた。
まさに異例のお出まし。
ああ、陛下は明治時代の公害の傷痕(きずあと)にまで、 かくも深く御心をお寄せ下さっている。
ならば今、目の前で、現在進行形で被害が覆い被さっている、 福島県の状況に対しては、どれほどご心痛か。
あの時、お出ましのお姿を拝し、そのように改めて気付かされた。
又、地震や原発、放射能などの専門家を御所に招かれ、 その方面については専門家も驚くほど、詳しい知識を身に 付けておられる。
この事実は、比較的よく知られているだろう。
東日本大震災から今年で7年。 その間、陛下は繰り返し福島県にお入りになっておられる。 地元の方が整理して下さった資料では以下の通り。
(1)平成23年5月11日、福島市・相馬市。 (2)同24年10月13日、川内村。 (3)同25年7月22日・23日、飯館村・福島市。 (4)同27年7月16日、桑折町・福島市。 (5)同28年3月16日、三春町。 そして、今年(平成30年)の全国植樹祭にあわせて、 6月9日から11日まで南相馬市などを訪れられる。 これで実に6回目。
大震災以来、ご公務の僅かな隙間を縫われて、 ご高齢の陛下がほぼ毎年、福島県にお出ましになっておられた。 尋常なお気持ちで出来る事ではない。
地元の方に教えて戴くまで、私は迂闊にも、 その事実をこれまで見逃していた。