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  • 執筆者の写真高森明勅

神職の「直言」

かねてご交誼賜って来た荒井神社(兵庫県)の 廣瀬明正(よしただ)宮司から、この度、 ご高著『師恩友益』をご恵送戴いた。

同書の書名は吉田松陰の「士規七則」による。

その事はご本人が言及しておられる。

「吉田松陰先生の『士規七則』の中に、 徳を成し、材を達する、師恩友益、多きに居る。 故に君子は交遊を慎むとあり、『師恩友益』の語が見える。 すなわち、“人が徳を高め、才能を伸ばすには、 先生から受けた恩と友人からの益によるところが多い。 だから、人格の高い立派な人はどんな人と交わるかを 慎重に考えるのである”」と。

この書名だけからでも、 廣瀬宮司の志を察する事が出来る。

目次には 「『女性宮家』創設問題について」 「山折哲雄氏の暴言に沈黙する神社界」 「月刊『WiLL』6月号の西尾・加地氏対談に思う」 などのご高論が並ぶ。

同書中よりごく一部だけをご紹介する。

「(以前は)自由に意見交換や議論ができる雰囲気があり、 今回の皇室典範改正(女性宮家創設)問題のように、 『男系』以外の意見は封殺するという原理主義的な 風潮は神社界にはなかった。 今後はもっと自由に発言できる場づくりが必要ではないだろうか」

「皇室に関する問題については、 宮内庁の関係者を批判する論者・団体もあるが、 それらとは一線を画し、神社本庁は今まで以上に 宮内庁と連携を密にして、皇室・皇族方のご意向に添う 活動をしなければならない。 それが、大御代(おおみよ)の弥栄(いやさか)を祈念し、 神宮を本宗(ほんそう)と仰ぐ神社本庁・われわれ神職の とるべき本来の立場であろう。 それゆえ、二千年続いてきた皇室をお守りし、 さらに千年、二千年と存続させるためには、 たとえそれが前代未聞の制度といわれることがあっても、 先例を開く気概をもって皇室典範の改正に取り組み、 この難局を乗り切らねばならないと考える」

「西尾(幹二)・加地(伸行)両氏…の口から、 “臣下として国民はかくあるべし”ということを聞いたことがない。 もっぱら“皇室はかくあるべし”である。 対談の終わりに加地氏は、 『今回の私たち二人の意見は、(皇室への)非難ではありません。 諫言(かんげん)です。』というが、むしろ『讒言(ざんげん)』 というべきではないか」

「皇室に対して“ああせよ”“かうせよ”的な発言が横行してゐるのに、 『皇室の尊厳を護持する』なずの神社界がなぜ沈黙をつづけるのか 理解できない。 神社本庁、神道政治連盟から非難する声も出ず、 神職の意見も見ない。いつの間にか洗脳されて、 違和感すら覚えなくなってしまったのだろうか」

「現憲法下のわが国は“君臣の義(を)講ぜざること 六十余年”であるが、皇室の祖先神『天照大神』を お祭りする伊勢の神宮を本宗と仰ぎ、 日々皇室のご安泰と国家の繁栄を祈ることを 使命とするわれわれ神職は、君臣の大義を忘れてはならない。 これからも続くであらう皇室をめぐるさまざまな論争に対して、 神職は臣下としての心構えを忘れず、対処してゆかねばなるまい」

いずれも勇気ある直言だ。


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