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  • 執筆者の写真高森明勅

核兵器、拡散へ?

米朝首脳会談に向け、北朝鮮側の駆け引きの巧みさ、 強(したた)かさが際立っているように見える。

率直に言って、北朝鮮の核兵器が事実上、 温存される形で両国の“手打ち”がなされる可能性は高いだろう。

私はやや早い時点から、「対話か圧力か」という段階はとっくに終わって、 「戦争か譲歩か」という段階に移っている事を指摘して来た。 しかも様々なリスクを考えると、 アメリカは北朝鮮を相手に戦争には踏み切れない可能性が高い。 つまり、アメリカが外見上は色々と格好はつけながら、 実質的には北朝鮮に大幅に譲歩するケースも、予め織り込んでおく 必要があるという見立てだった。 今のところ残念ながら、 私の見立て通りに事態が動いているように感じられる。 それに加えて、アメリカのトランプ大統領はイランとの 「核合意」からの離脱を表明した。 これでイランが核開発を再開する可能性が高まった。

そうなると、中東にどんな波紋が拡がるか。 佐藤優氏は以下のような見通しを述べている。 イランと敵対関係にあるサウジアラビアが、 パキスタンの核開発に資金援助をしていた関係から、 パキスタンが既に保有する核兵器の一部を、同国内に移転させる。 もしサウジが核兵器を手に入れると、 アラブ首長国連邦やクウェート、エジプトなども パキスタンから核兵器を購入したり、独自に開発したりする。 このように核兵器が一気に拡散するだろう、と。 佐藤氏の分析では、(事実上の核保有国である) イスラエルの反応が敢えて伏せられている。 これは同氏の情報源がどの方面であるかを推測させる。 それはともあれ、核兵器の拡散は国際社会を一層、不安定化させる。

核兵器が持つ非対称性から、(アメリカを含む) 大国による“グリップ”が効きにくくなるからだ。 東西冷戦が終わって、つかの間「アメリカ一強」の時代があり、 今や多極化に更に拍車がかかろうとしている。

なのに、わが国では冷戦“以前”の過去の遺物である 今の憲法(特に前文と9条)に、いつまでもしがみつこうとしている。 それは十分自覚されていないかも知れないが、 結局はいつまでもアメリカの庇護(という幻想) のもとにいたいからに他ならない。

今やアメリカは、GDP比較でわが国の100分の1という 規模の北朝鮮1国にすら、さんざん手を焼いている。

その現実を直視せよ。

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