top of page

「安定的な皇位継承」を理解できない国会質問と首相の迷答弁

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分
「安定的な皇位継承」を理解できない国会質問と首相の迷答弁

4月27日の参院予算委員会で日本維新の会の片山大介議員が「安定的な皇位継承について」質問に立った。しかし、質問内容は安定的な皇位継承とは無縁な、令和の政府有識者会議報告書が提案した目先だけの“皇族数確保”でお茶を濁そうとする、無理で無茶な2つのプランに終始した。


これに対する高市首相の答弁も、「退位特例法の附帯決議で示されました課題は先送りをすることのできない喫緊のものでございます。ぜひとも実現していかなければなりません」と言いながら、附帯決議に盛り込まれた「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設」

については、全く触れなかった。


先の報告書が、公然とそれらの「先送り」を決め込んだ事実すら、ちゃんと理解できていないお粗末な答弁だった。報告書では、「具体的に議論するには機が熟しておらず…将来において…議論を深めて行くべきではないか」として、“安定的な皇位継承”という附帯決議で示された課題を公然と先送り(!)していたのだ。どうやら国会では、質問する側も答える側も、附帯決議も報告書もろくに読まないで、やり取りしているようだ。


高市首相は去る2月27日の衆院予算委員会でも、自民党の小林鷹之議員の質問に対して、皇位継承について「皇統に属する男系男子に限ることが適切」と答えて、そのすぐ後に木原稔内閣官房長官が皇位継承資格ではなく、旧宮家養子縁組案の対象者を念頭に置いた答弁だった、と事実上の訂正を行う一幕があった(但し、旧宮家系子孫の国民男性が「皇統に属する」と言えるか疑問であることは、既に指摘した)。


いずれも、森英介衆院議長が先頃の記者会見で広く国民を対象とする「世論調査」と、衆院選当選者限定の「アンケート」とを混同したお粗末ぶりに輪をかけた、レベルの低さだ。


では先の報告書が、附帯決議で求められた安定的な皇位継承という「先送りできない喫緊の」課題への検討を、敢えて先送りしたのは何故か。その思考プロセスは、恐らく以下の通りだろう。

安定的な皇位継承を確保する為には、今の皇室典範が抱える構造的な欠陥(=側室不在の一夫一婦制で少子化なのに男系男子限定というミスマッチ)を是正して、女性天皇·女系天皇を認めるしか選択肢は無い(この点は平成の「皇室典範に関する有識者会議」報告書を参照)。


このことを、令和の有識者会議のメンバーはともかく、少なくとも官邸官僚たちは理解できているはずだ。しかし、今、これを持ち出すと、政界の男系派が思考停止のまま脊髄反射的に反発して、かえって問題の解決を遅らせてしまう。


一方で、その選択肢を放棄することは、皇室の存続自体を断念するに等しい。だから、やむなく今の皇位継承順序を「ゆるがせ(忽せ)にしてはならない」という建て前を押し出して、取り敢えず暫く欠陥の是正はしないが、かといって女性·女系の選択肢も切り捨てない為に、とにかく「安定的な皇位継承」というテーマに手をつけないで、先送りした…ということだろう(だからこそ、首相の失言を官房長官が大急ぎで訂正する必要があった)。


一先ず男系派をなだめる為に、「女性宮家」の手前の“内親王·女王の配偶者やお子さまを国民とする”不自然で無茶な妥協的プランも用意するし(これは、未婚の女性皇族方に夫婦も親子も身分が異なる近代以来“前代未聞”の「異例の家族」を強制する、非人道的なプラン以外の何ものでもない)、憲法違反の疑いがある旧宮家系子孫の養子縁組プランも目眩ましのオマケに付ける、というサービスぶりだ(事情が分からない自民党や日本維新の会に至っては、オマケの方を「第一優先」にする始末)。


しかし、それらのゴマカシ制度案がもし実現すると、皇室の将来にいかに暗い影を投げかけるか、これまで繰り返し指摘してきたつもりだ。


安定的な皇位継承とは無関係な無理で無茶な(しかも民意にも背く)プランを持ち出して、今更「先送りできない」などと(これまで先送りを繰り返しながら、どの口が言うか)数の力で丸呑みさせようとするやり方は、国民の総意に基づく「国民統合の象徴」たる天皇の地位の尊厳を損なう暴挙だ。

bottom of page