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男系男子限定は憲法上、男女平等原則の例外との解釈は無理

執筆者の写真: 高森明勅
高森明勅
11 分前
読了時間: 5分

男系男子限定は憲法上、男女平等原則の例外との解釈は無理

皇室典範(第1条)は皇位継承資格を「男系男子」に限定する。しかし、これは憲法(第14条)の性別による差別禁止(男女平等原則)に反しない、というのが、これまでの有力な理解だ。例えば以下の通り。

「(憲法)第14条(法の下の平等)と第2条(皇位の世襲)との関係は、第2条は第14条の特別規定というふうにわれわれは考えるのでございまして、憲法に違反するものとは考えないのであります。

…昔の伝統的な考え方で、男系をもって貫くということが、世襲の精神に合うのではないかと考えております」(昭和39年3月13日、衆院内閣委員会における宇佐美毅宮内庁長官の答弁)

「性差別を禁止した憲法の下では、女性にも(皇位継承)資格を認めるべきだという主張も強い。…しかし、平等に扱うのが好ましいにしても、そもそも憲法が平等原則の例外として世襲を認めている以上、ここでの性差別を違憲とまではいえないであろう。身分制が日本国憲法の基本原理と整合しないことを明確に意識するためには、あえて性差別を貫く方がよいという政策判断もありうるところである」(野中俊彦氏ほか『憲法 Ⅰ(第4版)』、高橋和之氏執筆)

「日本国憲法の作り出した政治体制は、平等な個人の創出を貫徹せず、世襲の天皇制(第2条)という身分制の『飛び地』を残した。…現に憲法がそのような決断をした以上、『飛び地』の中の天皇に人類普遍の人権が認められず、その身分に即した特権と義務のみがあるのも、当然のことである。したがって、天皇(そして皇族も)憲法第3章にいう権利の享有主体性は認められない。この考え方からすれば、身分制秩序の『飛び地』の中に外側の男女平等の原則を持ち込んで、女帝が認められない(皇室典範第1条)のは憲法違反だと主張するのは、論理の錯誤である」(長谷部恭男氏『憲法(第5版)』)

しかし、第2条が第14条の「例外(特別)」規定であるなら、その適用範囲はあくまで通則に対して必要最小限(!)でなればならない。そうでなければ通則そのものが掘り崩され、例外規定が例外でなくなってしまう。「飛び地」説などという無制限な拡大解釈は、むしろそちらの方が「論理の錯誤」だ。

更に「政策判断」として「あえて性差別を貫く」など、アンチ「天皇·皇室」心理による法解釈を逸脱した感情論·政治論であり、論外だ。

それらに対して、皇室の方々への特別扱いも「それが世襲の象徴天皇制を維持するうえで最小限必要なもの」に限定される、との解釈こそ説得的だ(佐藤幸治氏『日本国憲法論』)。

確かに、皇室の方々には憲法第1章が、優先的に適用される。しかし「世襲の象徴天皇制を維持するうえで最小限必要なもの」を超える部分では、第3章も適用されるはずだ。

現に、憲法(第2条)の「世襲」要請に対してマイナスに作用するにも拘わらず、皇室典範(第11条)では15歳以上の内親王·王·女王は、自己意思によって(皇室会議の同意の上で)皇籍離脱が可能との制度になっている。これは“飛び地”説の考え方とは違って、当事者へのしかるべき「人権」的配慮によると見る他ない。

この他にも、例えば憲法第3章にある奴隷的拘束·苦役からの自由(第18条)、内面(思想·良心)の自由(第19条)、学問の自由(第23条)などは当然、皇室の方々にも保障されるはずだ。

そこで旧説の妥当性を改めて検証すると、先ず憲法における「世襲」は天皇の血統=皇統による継承を意味する。その皇統には男性·女性、男系·女系が全て含まれる、というのが政府見解であり、学界の通説だ(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』、園部逸夫氏『皇室法概論』ほか)。

そうであれば、現在の皇室典範(第6条)が嫡出主義(一夫一婦制)を採用しながら(この時点で既に「昔の伝統的な❲?❳考え方」は通用しない)、皇位継承資格から皇統に属する女性·女系を除外し、男系男子に限定している制度は、(“性差別禁止”違反より以前に)明らかに憲法の「世襲」要請と真正面から衝突する。

女性天皇·女系天皇を排除する差別的な制度は、「世襲の象徴天皇制を維持するうえで最小限必要なもの」どころか、逆に致命的な障害になる。ならば、皇室典範(第1条)の「男系男子」限定ルールは、憲法(第2条)の「世襲」要請によって正当化できるどころか、むしろ否定されなければならない。

更に付け加えると、「国民統合の象徴」という地位(憲法第1条)は、国民が共有すべき普遍的な価値の体現者であることが期待される。ところが、男系男子限定ルールは明らかにそれとは対極にある男尊女卑、女性差別的な制度だ。これでは、「象徴」としての地位の正当性や尊厳を損ないかねない。

だから憲法の「天皇は象徴であるべし」という要請からも、男系男子ルールは否定されるべきだ。 以上によって、憲法の「世襲の象徴天皇制」を根拠として男系男子限定ルールを擁護しようとする主張は成り立たず、むしろそれを根拠に是正されなければならないことが明らかだ。



■追記


①10月22日、「史」編集会議。

②同日、プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」公開。

https://president.jp/articles/-/120696 ③10月25日、東京新聞にコメント掲載。

④10月26日、漫画家の小林よしのり氏が皇室典範改正法の旧宮家養子制度を憲法違反として提訴(11月4日に裁判所が受理)。訴状には「政府の横暴に国会及び国会議員が機能不全の今、司法の場が『最後の砦』として機能することを祈って、本訴訟をもって、これらに抗うものである」とある。 訴状作成のプロセスで微力ながら些かお手伝いした。

⑤10月31日、高森稽古照今塾の有志で小澤酒造の酒蔵見学、川合玉堂美術館の鑑賞など小旅行。天候にも恵まれ楽しい1日になった。

⑥11月4日、プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」公開。

https://president.jp/articles/-/121438 ⑦11月5日、潮流社より川辺乃素子氏『葦津珍彦ー神道防衛の道』を恵送戴いた。葦津氏の戦前から終戦直後までの活躍を焦点に据えている。

⑧11月9日、吉田はるみ前衆院議員のYouTube番組に出演。

⑨同日、吉田氏のZoomを利用した勉強会で講師を務める。

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