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皇室を皇室以外の何ものかに変質させかねない皇室典範の改正

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 12 分前
  • 読了時間: 6分
皇室を皇室以外の何ものかに変質させかねない皇室典範の改正

又々身辺繁忙の為、ブログの更新が遅れた。

皇位継承問題の現在地に関する簡単なメモを。


①皇室が切実に望んでおられ、国民も願い、上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法の附帯決議でも“先延ばしすることはできない”最優先課題として掲げられていた、憲法上の要請でもある「安定的な皇位継承」について、政府·国会は今も全く手つかずのまま、更に先延ばし(!)しようとしている。


②その本来の課題を敢えて迂回して、皇族数減少への“目先だけ”の対策に逃げ込もうとしている為に、あらゆる面で無理で異常で本末転倒な制度案しか出てこない状況に陥っている。


③具体的に皇室典範の改正案を見ると、政府有識者会議の報告書の提案通り、未婚の女性皇族がご結婚後も皇族の身分を保持される一方で、配偶者やお子さまは「国民」という位置付けになっている(改正案第3条)。これに伴い内親王·女王も、皇統譜に登録されているにもかかわらず、住民登録も義務付けられる(改正案第4条)。

近代以来、日本人同士が結婚する場合、皇族も国民も「家族の身分は同じ」という原則によって身分の変更が行われる。だから、皇族の家族は皆さま皇族であり、国民の場合も全て国民だ。しかし、唯一、内親王·女王の場合だけ夫婦·親子で身分が違う“異例の家族”が強制される。


社会通念上、“家族は一体”と見られながら、内実として皇族と国民によって構成される場合、内親王·女王が皇族として憲法(第1章)によって要請される非政治性·公正中立性と、配偶者やお子さまが国民として憲法によって


保障される政治活動の自由、宗教活動の自由、ビジネス活動の自由などが、現実の場で両立できるのか。

又、身分の異なる夫婦·親子であることが家族の絆にマイナスに働くことはたやすく想像できる。その手前に、ご結婚そのものへの障害にもなりかねない。


④これは明らかに、全政党·会派による全体会議を踏まえた衆参正副議長らによる「立法府の取りまとめ」を、逸脱している。これまでの議論の積み重ねを、政府によって一方的に覆された議長らをはじめ各党派は、全力で押し戻すべきだ。


⑤特に、天皇皇后両陛下の直系の皇女でいらっしゃる敬宮殿下の配偶者やお子さますら一般国民という位置付けで、皇室の「聖域」性、俗世間との厳格な“線引き”を果たして維持できるのか。畏れ多いが、天皇皇后両陛下とご公務、ご活動をしばしば共にして来られた敬宮殿下こそ、この度のいびつな制度設計によってご結婚が妨げられる懸念が、最も高いのではないか。


⑥皇統には男系も女系も含まれるというのが政府見解であり、学界の通説でもある。にもかかわらず、ただ“女性だから”というだけ(!)の理由で内親王·女王のお子さまが国民とされるのであれば、天皇(今上陛下)の直接のお子さま(敬宮殿下=1世)とか、(上皇陛下の)お孫さま(佳子内親王殿下=2世)、あるいは(大正天皇の)曾孫さま(彬子女王殿下、瑶子女王殿下、承子女王殿下=3世)という「皇統に属する」女性皇族による皇統の維持は、本人の1代限りで不可能になる。


⑦一方で、歴史上の天皇との繋がりが600年以上もの歳月を遡り、男系で20世以上の血縁の遠さで、80年近く俗世間で暮らし、親の代から既に一般国民の「皇統に属さない」はずの、今の皇室にとってほぼ余所者に近い民間人を(旧宮家系との交流の場だった菊栄親睦会の集まりも平成26年5月に開催されて以来、12年間も開かれていない)、“男性だから”というだけ(!)の理由で、歴史上全く前例がない養子縁組によって、正統性も合理性もないどころか、明白な憲法違反の疑いまで指摘されているのを押し切って、敢えて皇族の身分を与えようとしている(改正案第1条)。


しかも内親王·女王方とは違って、配偶者も子も「皇族」であり、その子が男子なら「実方(じつかた)の系統」つまり民間の“実家の血筋”を根拠に皇位継承資格(!)まで認める制度案だ。

もしその養子の子が即位したら、史上初の民間の血筋(!)による皇位継承になる。これはもはや文字通り皇位の簒奪であり、革命と呼ぶ他ない。これを「世襲」と呼べるのか。


⑧先頃の立法府の取りまとめでは、その危険性に直結する皇位継承資格を認めた養子案ではなく、そこまで踏み込まない制度案を、「特例法」による“例外的”な対処として想定していた。それを二重に裏切る形で、政府は恒久制度化しようとしている。


恒久制度にすると、民間から養子に入った人物が結婚できなかったり、男子に恵まれなかったりしても、又民間から養子を取れる。「民間人の養子」の「民間人の養子」の「民間人の養子」…という無限連鎖も、制度上は可能になる。


立法府としては、養子の子に皇位継承資格を認めるという「騙し討ち」(立憲民主党の水岡俊一代表)と共に、政府のペテンを糾弾し、法案の差し戻しを求めるべきだ。


⑨養子案は驚くべき皇統の冒瀆であり、皇室の「聖域」性への挑戦であり、男尊女卑の極みだ。 

天皇陛下と上皇陛下がお揃いで、養子案への拒絶感が強いのも当然だ。恐らく他の皇族方も同様だろうし、もし「養親」になる皇族が現れたら、失礼ながら皇室の中で孤立しかねないだろう。


⑩その上、未成年の15歳以上から養子縁組が可能という乱暴な制度にとどまらず、養子に予定されている「王」という身分なら、自由意思(への皇室会議の同意)による皇籍離脱が可能(皇室典範第11条第1項)で、制度上は皇族の離婚も可能(同第14条第3項)なのに、改正案では養子は王なのに離縁も皇籍離脱も一切認めない(改正案第1条)、という“一方通行”の非人道的な制度になっている。


⑪上記の1代限りの婚姻後身分保持案と恒久制度=エンドレスの養子案を突き合わせると、皇室はどうなるか。

これまでの皇統は、専ら悠仁親王殿下が男系子孫を残せるか否かによって、維持できるかどうかが全て決まる。そのような強烈な重圧によって、悠仁殿下がご結婚できないとか、できても男子に恵まれなければ、そこで皇統は途絶える。

そうでなくも、一夫一婦制で少子化なのに「男系男子」限定を維持すれば、早晩これまでの皇統は行き詰まる他ない。


代わりに民間からの養子縁組はエンドレスなので、その民間の賀陽家とか久邇家、東久邇家、または竹田家(更に30年ごとの「見直し」で対象拡大も)などの出身の男子が天皇になり、血統もそちらに完全に置き換わる。「国民と苦楽を共にする」というこれまで皇室に受け継がれてきた高貴な精神·気風も、養子達によって堅実に受け継がれるとは考えにくい。


万一、養子案が政府の目論み通りの成果に繋がれば、男系男子に固執して「皇室の伝統」を守ると言いながら、今の皇室とは血縁も気風も殆ど“赤の他人”という、民間出身の人々によって皇室が占められる。結局、急激であるか緩慢であるかはともかく、皇室が“皇室以外の何ものか”に変質する結果を導く。

余りにも危険であり、愚かではないか。


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