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旧宮家養子縁組案は皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を破壊

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 6 時間前
  • 読了時間: 4分
旧宮家養子縁組案は皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を破壊

政府·与党などは今の特別国会のうちに皇室典範を改正しようとしている。

その中でも与党が「第一優先」としているのは、旧宮家系子孫の男性国民が養子縁組によって

新しく皇籍を取得することを可能にする制度変更だ。


その為に、具体的には皇室典範の第9条(養子の禁止)と第15条(皇族以外の者及びその子孫について婚姻による以外の皇籍取得の禁止)を、改正する必要がある。

しかし、これらの条文が設けられているのは、それぞれ当然の理由があってのことだ。

それを再確認する議論を見られないのは不思議だ。

重大かつ尊厳な皇室制度の改正を論じるには、軽率かつ不用意すぎる。 これについては、法制局(内閣法制局の前身)の「皇室典範案に関する想定問答」(昭和21年)の記述を振り返ることが不可欠だ。そこに第15条の立法理由が明確に記されている。

「臣籍に降下したもの及びその子孫は、再び皇族となり、又は新たに皇族の身分を取得することがない原則を明らかにしたものである。

蓋(けだ)し、皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を保つためである」これによって、旧宮家系男性が婚姻によらず養子縁組という“裏ワザ”で皇籍を取得することも、「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)」を損なうものとして排除されるべきことは、明らかだ。

そもそも、いったん皇籍を離脱した者が、再び皇籍に戻ることができないのは、明治40年の

皇室典範増補によって明文で規定されていた。即ち「皇族ノ臣籍ニ入リタル者ハ皇族ニ復スルヲ得ス(ず)」(増補第6条)と。

これは、明治天皇の勅定(皇族会議及び枢密顧問の諮詢を経てご裁定)にかかる。

現典範の第15条は、これを踏襲したものだ。「保守」「伝統」「愛国」「尊皇」などを標榜する者たちが、この経緯を知らないか、知っていても無視ないし軽視している振る舞いには、首をかしげる。

養子縁組の禁止も、明治典範の規定(第42条)を踏襲したものだ。

明治典範で養子縁組が禁じられた理由は、「宗系紊乱の門を塞ぐ」(伊藤博文名義『皇室典範義解』)主旨とされる。

実系(自然血縁)の他に養系(法定血縁)を認めることで、血統の混乱が生じるのを予め防ぐ目的だった。 より根本的な問題は、婚姻という心情的·生命的な結合を介さずに、養子縁組という簡便な手続きだけで皇籍取得を可能にすることは、先に触れた「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)」を破壊する、という一点だ。

これまでも繰り返し紹介して来たが、旧宮家の皇籍離脱があった僅か7年後(!)に刊行された

神社新報社·政教研究室編『天皇·神道·憲法』(昭和29年)に、次のように記されていた事実を見逃すべきではない。

「占領下に皇族の籍を離れられらた元皇族の復籍ということが一応問題として考へられるであらう。この間の事情については、論ずべき問題も少なくないが、その事情の如何(いかん)に拘らず、一たび皇族の身分を去られし限り、これが皇族への復籍を認めないのは、わが皇室の古くからの法である。

明治四十年の皇室典範増補“第六条皇族の臣籍に入りたる者は、皇族に復するを得ず”とあるは、単なる明治四十年当時の考慮によりて立法せられたものではなく、古来の皇室の不文法を成文化されたものである。


この法に異例がない訳ではないが、賜姓の後に皇族に復せられた事例は極めて少ない(植木直一郎“皇室の制度礼典”参照)この不文の法は君臣の分義を厳かに守るために、極めて重要な意義を有するものであつて、元皇族の復籍と云ふことは決して望むべきではないと考へられる」この文章の実際の執筆者は、戦後の右翼·民族派で最大の思想家と言われた葦津珍彦氏だった。

しかも、ここで議論の対象とされているのは、先にも触れたように同書が執筆された当時、

ごく近い頃まで現に皇族だった方々(元皇族)だ。

現在、政府·与党が養子縁組の対象者として想定しているのが、その孫の世代で、親の代から生まれながらの民間人であるのとは、前提が異なる。

それでも「君臣の分義を厳かに守るために…元皇族の復籍と云ふことは決して望むべきではない」と言い切っておられた。


■追記

①4月24日、「史」編集会議。会議に参加の文芸評論家で関東学院大学教授の富岡幸一郎氏から高著『保守のコスモロジー』(講談社)を戴く。本文中、拙著に言及下さり光栄だ。

②4月25日、プレジデントオンライン連載「高森明勅の皇室ウォッチ」同月2本目の記事が公開された。内容は全体会議への批判。少し文字数が多く難しめの内容かと思うが、

幸い多くの読者を得ているようだ。

③「週刊女性」4月28日発売号にコメント掲載。 ④「女性自身」同日発売号にコメント。 ⑤同日、北海道新聞の取材に応じる。 ⑥4月29日は政府主催「昭和百年記念式典」へ。式典委員長を務める高市早苗首相から招待状が届いた時は、些か複雑な感情を抱いた。⑦同日、式典後、民間の「昭和の日をお祝いする夕べ」に参加。ここで東洋大学講師の山本直人氏が高著『亀井勝一郎』(ミネルヴァ書房)を恵与下さった。感謝。

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