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皇室典範改正を巡る高市早苗首相の国会答弁は間違いだらけ

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 3 分前
  • 読了時間: 5分
皇室典範改正を巡る高市早苗首相の国会答弁は間違いだらけ

高市早苗首相は去る2月27日の衆院予算委員会で、「男系男子に限ることが適切」「皇位が女系で継承されたことは1度もない」などと答弁した。


しかし翌日、木原稔内閣官房長官は記者からの質問に対して、「男系男子に限る」というのは皇位継承ではなく養子縁組を念頭に置いたものだったと、事実上の訂正を行った。


これは余りにも初歩的な間違いで、お粗末至極と言う他ない。
高市首相が答弁の拠り所としたはずの有識者会議報告書を実際には読んでいないか、読んでいても理解できていなかった事実が暴露された。


高市氏は勉強熱心とされるが、少なくとも皇室については残念ながら余り勉強していないようだ。
無知は一般に無関心ゆえだから、本心では皇室への関心も薄いのではないか。


そもそも、令和の有識者会議報告書が本来の課題だった皇位継承問題については「白紙回答」とし、“目先だけ”の皇族数減少対策でお茶を濁したのは何故か。
 側室不在の一夫一婦制で少子化という条件を踏まえて、本気で「安定的な皇位継承」を目指せば、皇位継承資格の「男系男子」限定を解除して、女性天皇も女系天皇も認める以外に手立てがないことは、明らかだ。

そのことは、平成の小泉純一郎内閣当時の「皇室典範に関する有識者会議」報告書にも明記されているように、官邸官僚たちも分かっているはずだ。
しかし分かっていても、それを今の時点で前面に押し出せば、自民党内などの民意から乖離した男系派が、思考停止のまま脊髄反射的に反発して、収拾がつかなくなる。

そこで差し当たり、現実味のない旧宮家養子縁組プランで男系派にアメ玉をしゃぶらせながら、それとセットで内親王·女王が婚姻後も皇籍の保持されることを可能にする皇室典範の改正を行って、ひたすら将来に望みを繋ぐしかない。


…という役人的な発想から、敢えて皇位継承問題には一切立ち入らず、論点をスリ替えたのが件の報告書だった。
ところが今回の高市氏の失言は、“落第”報告書の背後にある、その辺りの微妙な事情を全く知らず、理解できていない。

しかも、男系男子限定の固定化は「皇統の確実な安楽死を招く」以外の何ものでもない(2月27日拙ブログ参照)。そのことが、勉強不足で分かっていないのを露呈してしまった。
更に間違いは、これだけにとどまらない。
 「皇位が女系で継承されたことは1度もない」という答弁も勿論、誤りだ。
これについては、“二重の誤り”を指摘できる。
先ず、過去の皇位継承が女系によるか否かは、当然ながら同時代の法規範や価値観に照らして判断すべきなのに、現代の男尊女卑的なバイアスがかかった勝手な定義によって決め付けていること。例えば、両親のうち母親だけが天皇であったり、権威ある直系の血筋であったりする等の理由から、当時の位置付けでは父親ではなく母親の血筋を引く女系と見られていた場合でも、父親が皇族なら実情に関わりなくひたすら男系と短絡している。


その上、現代では既に失われた側室制度=非嫡系継承という安全弁、及びシナ父系制=男系主義に由来し、男系血統の標識としての性格を持つ前近代的“姓”の観念が、暫く無視できない拘束力を持っていた等という、特殊な歴史的条件による「相対的な事実」に過ぎないものを、あたかも時代を超越して未来をも縛る「絶対的な規範」であるかのように錯覚していること。

これら二重の誤りだ。


歴史を顧みると、応神天皇が果たして男系継承かは疑いを排除できず、現在の皇統の源流に当たる欽明天皇も女系と解され、持統天皇に至る皇統は女系を介して雄略天皇に遡ると同時代に見られており、元正天皇は当時の基本法である「大宝令」(継嗣令)では女系と位置付けられた等の事実があった。


従って 皇位の継承については男系ではなく、より上位の概念である「皇統」によることこそが伝統であり、絶対不動の規範と見るべきだ。


もしわが国がシナのような男系社会だったならば、当然「同姓不婚」を原則として皇族同士の婚姻など絶対不可だったはずだ。

ところが事実はむしろ逆で、皇族同士の婚姻が実例として多く確認できるだけではなく、「大宝令」「養老令」、明治の皇室典範では、法規範としてそれを規定していた。


明治典範の制定に際しても、「皇統」による継承を条文で規定する根拠に正史たる『日本書紀』の書名を挙げる一方、「男子」限定についてはプロイセン·ベルギー·スウェーデンというサリカ法典の影響を受けたヨーロッパの君主国の名前を挙げるしかなかった(『皇室典範草案』)。


憲法が要請する皇位の「世襲」も、“皇統による継承”を意味する。その皇統には、男系も女系も共に含まれるというのが政府見解であり(内閣法制局執務資料『憲法関係答弁例集(2)』など)、学界の通説だ。


男系男子限定は元々伝統とは無縁な、皇統廃絶への“一本道”であることを知るべきだ。


更に政権与党が「第一優先」とする、80年近くも前に皇籍を離れ、親の代から既に国民である

旧宮家系子孫の男性を養子縁組で皇族にする方策こそ、正真正銘、前例が「1度もない」愚挙だ

(宮内庁書陵部『皇室制度史料 皇族 一』など)。


このプランは殆どリアリティが無いのがせめてもの救いだ。しかし万が一にも実現すれば、端的に皇統を断絶させ、賀陽家·久邇家·東久邇家·竹田家という一般国民の血筋から天皇を出す可能性を導く。何故なら、彼らは既に名分上「皇統」に属さないからだ。


「皇統トハ唯(ただ)皇族タルノ身分ヲ有スル者ノミヲ意味シ、既ニ臣籍ニ入リタル者ヲ含マズ」(美濃部達吉『憲法撮要』改訂5版)
「『祖宗ノ皇統』とは、単に家系的血統を意味するだけでなく、『皇族範囲内にある』といふ名分上の意味を包含してゐるのである」(里見岸雄『天皇法の研究』)


「歴代天皇の男系の男子には『皇統に属する男系の男子』と『皇統に属さない男系の男子』の2種類があり…私のような旧皇族の子孫などは後者に該当する」(竹田恒泰氏『伝統と革新』創刊号)
そもそも皇室典範では養子縁組を否定し(第9条)、婚姻以外による皇籍取得は全て否認している(第15条)。これは何故か。

その理由を、今の皇室典範の制定に際して法制局(内閣法制局の前身)がまとめた「皇室典範案に関する想定問答」では、次のように述べる。


「臣籍に降下した者及びその子孫は、再び皇族となり、又は新たに皇族の身分を取得することがない原則を明らかにしたものである。蓋❲けだ❳し、皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を保つためである」
政権与党は、「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)」をないがしろにする方策を、「第一優先」で進めようとしている。 これは無知や不勉強で済ませられない暴挙だ。

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