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自民·維新の連立政策「旧宮家養子縁組」は皇統断絶への一本道

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 5 日前
  • 読了時間: 3分
自民·維新の連立政策「旧宮家養子縁組」は皇統断絶への一本道

自民党と日本維新の会の連立政権に向けて、維新側が連立の条件として提示した政策の中に、

「旧宮家の男系男子の養子縁組を実現する皇室典範の改正」という項目が入っている。


これは元々、高市早苗·自民党総裁が総裁選で掲げた主要政策の1つだ。


「126代続いた男系の『皇統』をお守りするため、『皇室典範』を改正します」というのが、それだった。維新側の連立入りしたい下心が丸見えだ。


しかし失礼ながら、そもそも「皇統」の何たるかを理解できているのだろうか。

以前も書いたことがあるかも知れないが、自民党の国会議員の勉強会でレクチャーを頼まれた時に、「皇統」という言葉が咄嗟に理解できない議員が何人もいて驚いた。


私が「男系·女系の区別の前提となる、より上位の根本的な概念」として“皇統”に言及しても、「コートー?」という反応で、漢字変換ができず怪訝そうな表情を見せている議員が、ズラッといた。有力なベテラン議員も含めて、皇位継承問題の勉強会にわざわざ集まった、恐らく自民党の中でもこのテーマに熱心なはずのメンバーですら、そうだった。


「万世一系」という言葉は知っていても、その“主語”とも言える「皇統」は知らないという本末顚倒ぶりに、いささか呆れた。


それ以降、政治家や一般向けに説明する時は、「皇統問題」という言葉を控えて「皇位継承問題」に言い換えることにした。


これまで、皇位継承問題を混乱させ、その解決を遅らせている重要な原因の1つは、最も基礎となるべき「皇統」概念の欠落だろう。


皇室には制度上、天皇(及び上皇)の他、皇族の中に皇統に属する方々(親王·内親王、王·女王)と皇統に属さない方々(皇后·親王妃·王妃など)が、おられる(但し皇后·親王妃·王妃などが皇統に属している場合も可能性としてはあり得る)。皇統に属する方々が皇室を構成するのは当たり前だ。


皇統に属されない方々が皇室内におられるのは何故か。皇位が「世襲」によって継承されるべきである以上、「婚姻」は決定的に重要な意味を持つ。その場合、ご結婚相手が皇統に属さないケースが、普通に予想できる。


しかし、配偶者は皇族のご家族であるから、近代以降の「家族は同じ身分」という原則に則って、「皇族」の身分とされることになった(前近代では婚姻による身分変更はなし)。


こうして、皇統に属さなくても、婚姻によって皇族の身分を取得された方々も、皇室を構成する結果となった。それらの方々も、“宮家の当主”になられる可能性があり、皇后(皇太后·太皇太后)は天皇の国事行為を全面的·継続的に代行する「摂政」に就任されることもあり得る。


それ故、皇室の尊厳や「聖域」性を守る為に、皇統に属さない国民が心情的·生命的な結合である

「婚姻」以外の理由によって皇族になることは、厳格に禁じられた。当然のルールだ。


ところが、親の代から既に国民(!)であって、もはや(生物学的な意味でなく名分上の意味として)「皇統に属さない」旧宮家系子孫(例えば美濃部達吉『憲法撮要(改訂第5版)』に「皇統トハ唯❲ただ❳皇族タル身分ヲ有スル者ノミヲ意味シ、既ニ臣籍ニ入タル者ヲ含マズ」とある)の男子を“養子縁組”という単なる法律上の手続きだけで皇族にする、危険この上ないプランの一致によって自民と維新が連立を組むというのは、ほとんど悪夢に近い。


同プランでは、「養子」になった人物の男子には、皇位の継承資格まで認めることになろう。

しかし将来、もし皇統に属さない人物の子孫が皇位を継承したら、それは勿論「世襲」とも言えず、その時点でこれまでの「万世一系」の皇統は断絶する。


旧宮家養子縁組プランは、「皇統をお守りするため」ではなく、逆に皇統断絶への一本道だ。危ういかな。



▼追記

10月14 日に今月2本目のプレジデントオンライン

高森明勅の皇室ウォッチ」が公開された。



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