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皇室制度改正に向けた「全体会議」はそもそも何の為か?

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 5月3日
  • 読了時間: 3分

皇室制度改正に向けた「全体会議」はそもそも何の為か?

皇室制度の改正を目指し、衆参両院の正副議長が呼び掛けて、全政党·会派が一堂に会した「全体会議」が行われて来た。これはそもそも、一体、何の為に開かれているのか。


普通、与党が国会の議席の過半数を占めていれば、法案は与党の同意さえあれば提出できる。

今のように、与党が衆院の半数に達していなくても、個別に野党と協議して、賛同が得られれば、それでOK。


全政党·会派との協議などは必要ないし、むしろ足枷になる。

なので、政府·与党としては“やりたくない”手順だろう。


ならば何故、皇室制度の改正については、敢えて法案提出に手間取る結果に繋がるはずの

「全体会議」を行っているのか。念の為に、そこを確認しておこう。


理由は簡単だ。


憲法上「国民統合の象徴」とされる天皇に関わる制度改正なので、他の法律のように単純多数決で押し切るのは相応しくない。“全会一致”が最も望ましい。たとえそれが無理でも、可能な限りそれに近付けたい、という動機があるからだ。


これは、上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法の時に、当時の大島理森·衆院議長が

心を砕かれたことだった。目の前で展開される有識者会議の迷走ぶりに憂慮した大島氏が、政府に掛け合って同会議での議論を一旦、停めさせ、「立法府の総意」形成を優先した。


政府の側も、多少の紆余曲折はあったものの、全体会議での合意事項を骨格として、法案作りに取り組んだ。その頃、メディアは有識者会議の動きを過大に報道した。だが、実際の法案作りでは、同会議が関与した部分は枝葉末節に過ぎなかった。


その結果、自民党から共産党まで法案への賛成に回り、議決の場面では反対政党が無い状態で可決できた。これが皇室関係の法律作りの良い前例になった。今回も、できるだけそれを踏襲しようとしている。


しかし、今の額賀福志郎·衆院議長らの使命感や政治的力量は、残念ながら往時の大島氏と比べるべくもない。仄聞するところ、玄葉光一郎·衆院副議長などは、各党派の合意形成がスムーズに進まなければ、反対政党があって採決が“汚い形”になってもお構いなく、自民·公明·維新·国民民主などによる多数決で押し切ってでも、早く決着させたい意向だとか。しかしそれは、自分達が呼び掛けた「全体会議」の自己否定に他ならない。


ここに来て、野党第1党の立憲民主党から筋の通った妥協案(内親王·女王の配偶者とお子さまの身分を婚姻時に皇室会議で決めるプラン)が出された。自民党に僅かでも良識が残っていれば、

この線で一先ず「立法府の総意」をまとめることは、至難ではあるまい。


やはり「国民統合の象徴」という天皇の地位にふさわしい形で、第1歩目の決着を目指すべきだ。


その際、立法府として“本来の課題”である「安定的な皇位継承」に引き続き取り組むことを、

併せて合意事項に加え、第2歩目(!)に確実に繋げることが肝要だ。



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