
NHKNEWSが10月1日に「立民 野田代表“女性皇族に加えて配偶者や子どもに皇族身分を”」という記事を配信した。
これは1日夜、立憲民主党のインターネット番組「立憲ライブ」で、辻元清美代表代行と対談した時の発言だ。
野田佳彦代表の発言が以下のように紹介された。
「女性皇族が結婚後も皇族にとどまれるようにするやり方が大事だが、その配偶者やお子さんが
皇族になるのか、国民のままなのかわれわれと他の党と差がある」
「私は配偶者もお子さんも皇族にすべきだと思う。男系の女性天皇に持っていくためにも、今のところ配偶者やお子さんの問題をどうクリアするかだ」
この発言で興味深いのは2点。
先ず1点目としては、政府が国会に検討を委ねているプランでは、婚姻後も皇族の身分を保持される内親王·女王の配偶者やお子様の身分は国民とする、という無理なルールを持ち出している。
それに対して、自民党をはじめ同調する党派も見られる。それに対して、明確に一線を画した、ということだ。これは、野田氏自身が「準々決勝」と位置付ける“皇族数確保”を巡る取り組みでの、最大の対立点だ。
この点について、泉健太代表時代には、踏み込んだ主張ができていなかった。野田代表に交代したことのプラスの変化がハッキリと表れている。
2点目として、女性皇族の配偶者やお子様の身分の問題が、次の「準決勝」の課題である“女性天皇”の可能性ともリンクする事実をしっかりと自覚していることが、伝わる。
もし女性皇族の配偶者やお子様が国民なら、女性天皇の可能性は大きく狭まらざるを得ない。
つまり、準々決勝で勝ち上がらなければ、準決勝に進むのが至難になることを肝に銘じて取り組もうとしている、ということだ。
「男系の女性天皇」という言い方を敢えてしているのも、「決勝」の課題である“女系天皇”を今の局面で前面に打ち出せば、ハレーションを起こして準々決勝すら勝ち上がれない虞れがある、
との判断によるものだろう。
これは勿論、政府とギリギリの綱引きをする野党第1党の立場での戦略だ。
その野党を後押しすべき国民まで、それに配慮して主張をトーンダウンさせる必要は全くない。
ただ、野田氏としてはそのような展望の中で、一歩ずつ勝ち上がろうとしていることは理解しておくべきだろう。更に記事には、対談相手の辻󠄀元氏の発言は紹介されていないが、同氏がここで対談相手として登場している事実も、見逃せない。と言うのは、失礼ながら立憲民主党で皇位継承問題を巡る論点整理をまとめた時には、辻󠄀元氏の存在感が稀薄だったからだ。
「立憲民主党なんだから最低でも女性天皇は当たり前よ」という同氏の勇ましい発言を、人づてに耳にすることはあった。しかし、論点整理の為に全議員が参加できる正式な討議の機会が複数回設けられたにも拘らず、男系派の議員が少数ながら積極的に参加して発言を繰り返す中で、私の記憶では辻󠄀元氏は一度も発言しないどころか、出席すらしていなかったはずだ。
その為に、「やはり元々は反天皇·反皇室だった人だから、この問題に冷淡なのではないか」という声も、聴こえていた。しかし、漫画家·小林よしのり氏の先日のブログ(9月30日17時48分公開)によると、個人的に近刊の『愛子天皇論2』を贈られたことへのお礼の電話が、辻󠄀元氏からかかって来たという。
この問題への熱意がいよいよ高まったのかも知れない。
もしそうだとすると、それは小林氏の「本の力」による部分も決して小さくないだろう。辻󠄀元氏の今後の活躍にも期待したい。私も今、11月刊行に向けて次の本の準備を進めている(初校が終わった段階)。果たしてどの程度の影響力を持ち得るだろうか。
皇位継承問題について、石破茂首相が登場したことで、具体論に踏み込んだ“違い”を明確に打ち出すことが、立憲民主党にとって有利な客観情勢になっている。党内基盤が脆弱な石破氏は党内の強硬な男系派にも配慮せねばならず、その意味で立憲民主党として攻めやすいのではないか。
皇位継承問題について、立憲民主党はこれまで国会内で孤立気味だった。だが今回の発言を見ると、もはや両論併記的な「守り」でなく、方向性を絞って「攻め」に転じることが得策だと、党内を説得できる条件を野田氏は手にしたようにも見える(楽観はできないが)。
なお、石破氏がまだ天皇陛下から首相に任命される前に、政権与党とはいえ単に政党の党首に過ぎない者が、天皇陛下の国事行為である衆議院の解散を事実上表明したのは、憲法違反の疑いがあることを野田氏がいち早く指摘したのは、流石だった。
これについて早速ブログを書くつもりだったが、ここで取り上げたニュースを優先することにした。