北朝鮮の金正恩総書記の後継者について、以下のような情報がある(手嶋龍一氏·瀬下政行氏『公安調査庁秘録』)
「手嶋『朝鮮半島は男系優先の儒教色が濃い社会だと言われてきました。女性(金総書記の娘“ジュエ”)が政権の後継者になることは考えられますか』
…
瀬下『…朝鮮半島では男系継承の伝統が根強いことから、女性が権力を継承する可能性については懐疑的な見方もあります。しかし…金正恩氏が何らかの理由で娘に権力を継承させたいと考えている可能性も否定できません。
…早期に表舞台に出すことによって、男子継承の観念が根強い社会を説得する狙いがあるとも考えられます』」
朝鮮半島はシナ大陸と地続きゆえに、古代以来、シナの男系主義=男尊女卑の圧倒的な影響の下に置かれて来た。これに対して、わが国は早くも5世紀末には事実上、冊封関係を解消した。
その後、推古天皇朝の遣隋使によってそれを公然化したが、シナ化=男系化を全く免れることはできなかった。しかし、平安時代の遣唐使廃止以降の趨勢については、以下のような指摘がある(吉田孝氏『律令国家と古代の社会』)。
「日本は、唐帝国の衰退にともなう国際的緊張関係の稀薄化のなかで、中国文明とは異質の国制や文化を独自に形成していった。…それに対して朝鮮では、新羅より高麗、高麗より李朝と、徐々に着実に中国文明への傾斜を強めてゆく」
朝鮮半島が名義上の服属関係を解消するのは、明治時代に日清戦争で日本が勝利し、下関条約によって独立国と位置付けられてから。
ところが、今や北朝鮮でもようやく、古代シナに由来する「男系継承の伝統」から
離れる可能性が浮かび上がっているのかも知れない。
一方、朝鮮半島よりもずっと早くシナ文明圏から政治的に自立し、「中国文明とは異質な国制や
文化を独自に形成」したはず日本の社会のごく一部に、北朝鮮の金正恩氏よりも頑固に、
今なお「男系継承の伝統(?)」を死守しようとする人々がいるのは不思議だ。
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