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  • 執筆者の写真高森明勅

歌会始の「お題」は天皇陛下から人々への大切なメッセージ


歌会始の「お題」は天皇陛下から人々への大切なメッセージ

毎年、1月に宮中で行われる歌会始。今年は1月19日に行われた。

高森稽古照今塾の塾生の恩師の詠進歌が入選。今年の入選歌の作者の中で最高齢としてメディアなどにも取り上げられた。


歌会始のお題(勅題)は、天皇陛下ご自身がお決めになる。そこには、天皇陛下からの大切なメッセージが込められている。


今年は「和」だった。和合、調和、融和など連想させる言葉だろう。


これは、日本の社会が経済的·社会的·心理的に分断されがちな現実を踏まえられ、そのような残念な現実を人々が力を合わせて乗り越えることを願っておられるお気持ちから、このようなお題を選ばれたとも拝察できる。


令和になってからのお題は次の通り。


2年=望

3年=実

4年=窓

5年=友

6年=和


先ず「望」はいかにも新しい時代の幕開けに相応しいお題だろう。


この時の皇后陛下のみ歌には「希望」という語が含まれていた。

「災ひより

立ち上がらむと

する人に

若きらの力

希望をもたらす」


このみ歌は「災害による被害に深くお心を痛められながらも、各地で高校生など若い人たちが、ボランティアとして後片付けや復旧の手伝いを献身的に行い、人々に復興の希望と勇気を与えていることを頼もしくお思いになり、お詠みになったもの」という。


次の「実」というお題での御製は次の通り。


「人々の 

願ひと努力が

実を結び

平らけき世の

到るを祈る」


コロナ禍のさなかにあって「窓」というお題を選ばれた天皇陛下は次の御製を詠まれた。


「世界との

往き来難かる

世はつづき

窓開く日を

偏(ひとえ)に願ふ」


コロナ禍で人と人との繋がりが疎遠になりがちだった時期に「友」とのお題。

敬宮殿下のお歌。


「もみぢ葉の

散り敷く道を

歩みきて 

浮かぶ横顔  

友との家路」


今年の皇后陛下のみ歌。


「広島を

はじめて訪(と)ひて

平和への

深き念(おも)ひを 

吾子(あこ)は綴れり」


これは、敬宮殿下が中学3年生の時に初めて広島を訪れられ、その時のご経験と深められた平和への願いを卒業文集に書かれたことへの、ご感慨を詠まれたもの。


更に、敬宮殿下のお歌は次の通り。


「幾年(いくとせ)の

難き時代を

乗り越えて

和歌のことばは

我に響きぬ」


雄大な歴史感覚を読まれている。「難き時代を乗り越えて」という表現に心を動かされた国民も多かったようだ。


来年のお題は「夢」。


難き時代にあっても夢を忘れてはならないと、呼び掛けて下さっているかのようだ。

詠進歌の締め切りは9月30日。詳しい要領は宮内庁のホームページを参照。


追記

1月30日、プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」公開。敬宮殿下の日赤嘱託勤務内定について。


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