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  • 執筆者の写真高森明勅

皇位継承は今の天皇とどれほど血筋が離れていても問題なし?


皇位継承は今の天皇とどれほど血筋が離れていても問題なし?

日本会議の機関誌『日本の息吹』12月号にこんな記述があった。


「皇位継承というのは、基準は初代の神武天皇にあるのです。神武天皇の血筋を男系で継承していること。これが全てですから、今の天皇とどれほど血筋が離れていようと、本質的な問題ではないのです」(勝岡寛次氏)


旧宮家系国民男性の養子縁組プランを擁護する論の中での発言だ。


しかし、「今の天皇」=今上陛下には現にお子様がいらっしゃる。ご長女の敬宮殿下が天皇·皇后両陛下の愛情溢れるご養育のもとで、お健やかにご聡明に成長していらっしゃる。にも拘らず、「女性だから」という“だけ”の理由で皇位継承資格を認めない明治以来の「男尊女卑」ルール。

それを、昭和皇室典範による「側室不在·嫡出限定」の条件下でも、(既に持続不可能なのが分かり切っているのに!)頑なに維持しようとしている。


その無理を押し通す為に、親の代から一般国民で天皇からの血筋も20世以上(!)も離れた人物の皇籍取得を可能にしようとしている。それが旧宮家プランの“本質”だ。


皇室の尊厳、「聖域」性を損ない、厳格であるべき皇室と国民の区別を曖昧にする(その上、皇位継承の安定化には繋がらない!)愚策と言う他ない。それを正当化する為に上記のような苦しい弁明が試みられたのだろう。暴論だ。


天皇·皇室を巡る制度において、親王·内親王と王·女王という皇族の身分差を決定するのは、まさに「今の天皇」との血縁の距離による(大宝令·養老令、明治皇室典範·現皇室典範)。「今の天皇」こそが基準なのだ。


過去の皇位継承を振り返っても、「神武天皇」ではなく、「今の天皇」又は“時代的に近い天皇”からの血縁の距離が、決定的に重要だったことが分かる。


これまでの126代プラス北朝5代の天皇を見ると、131代中、117代は皇子=「天皇のお子様」(1世)だった(皇室典範の用語法では「皇子」には親王·内親王を含む)。最も遠かったのは応神天皇の“5世”の子孫だった第26代の継体天皇。

だが、この時はそれまでの直系の血筋を引く手白香皇女(1世!)とのご婚姻によって、正統性を保持できた(そのお子様の第29代·欽明天皇は同時代では手白香皇女の血筋=女系による皇統の継承者と見られたと推測できる)。


「基準は初代の神武天皇」などという事実は歴史上、どこにも存在しない。もし「神武天皇の血筋を男系で継承していること、これが全て」ならば、平将門も源頼朝も足利尊氏も皆、皇位継承資格があったという結論になる。しかもこれらの人物は全て、現在の養子縁組プランの対象になっている旧宮家系国民男性よりも、天皇との血縁は遙かに近い(平将門=5世、源頼朝=10世、足利尊氏=15世)。令和の今、我々の目の前に光輝くような皇子=「天皇のお子様」がいらっしゃる。

その敬宮殿下の皇位継承資格を認めないで、婚姻を介さず一般国民の皇籍取得を可能にするなど、本末転倒も甚だしい。皇室の伝統にも、圧倒的多数の国民の願いにも背く、無謀な企てだ。


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