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  • 執筆者の写真高森明勅

女性国民が婚姻で皇籍取得できるなら旧宮家養子縁組も同じ?


女性国民が婚姻で皇籍取得できるなら旧宮家養子縁組も同じ?

国民の中で、旧宮家系男性だけが皇室典範で禁止されている養子縁組(皇室典範第9条)の例外として、“特別扱い”によって皇族の身分を取得できるというプラン。


これは、憲法が禁じる門地(家柄・血筋)による差別(憲法第14条第1項)に当たる、との指摘がなされている。それに対し、いまだに説得力のある反論が示されていない。


先頃は以下のような意見を見かけた。


国民のうち女性だけが婚姻によって皇族の身分を取得する制度は、本来なら憲法が禁じる“性別による差別”に該当するはずなのに、皇室は憲法上別枠の「身分制の飛び地」だから違憲とされていないので、旧宮家養子縁組プランも同じように解釈できる、と(「SPA!」8月1日号)。


しかし、婚姻による皇籍取得が女性国民だけに限られているのは、内親王・女王は皇族以外の者と婚姻された場合に、皇籍を離れられる制度(皇室典範第12条)を採用していることの“反射的”効果に過ぎない。


このような制度が真に妥当かどうかはともかく、これは憲法第1章が優先的に適用される皇室“内部”のルール。それらの女性皇族が婚姻と共に皇籍を離脱されるのは、現在のルールでは皇位継承資格が「男系男子」に限定されているからに他ならない。


この限定そのものは、憲法上別枠の皇室内部だけのルールとして、「性別による差別」に当たらないというのが、差し当たりこれまでの政府見解であり、憲法学界の通説だ。

ところが旧宮家プランの場合はどうか。皇室内部のルール設定ではない。


一般国民の中から特定の家柄・血筋(=旧宮家系男性子孫)だけに限定して、これまで禁止されて来た皇族との養子縁組(皇室典範第9条)を“例外的”に可能とする制度だ。そうであれば、国民平等の理念に反し、「門地による差別」に該当することは避けられないだろう。


もし憲法が要請する「世襲」自体がズバリ“男系男子”に限定した概念ならば、それを根拠として、「憲法の一般規定(門地差別禁止)VS例外規定(世襲要請)→後者が優先」という構図の中で、例外扱いも可能になる。


だが、世襲は女性・女系も包含するというのが政府見解であり、学界の通説なので、残念ながら無理。


なお、女性皇族がご婚姻と共に皇籍離脱される現行制度や、学界で有力化している「身分制の飛び地」説の問題点については、以前に公開したブログ「皇室の人権を巡る憲法学における通説の

変遷とその問題点」(令和3年12月20日)など参照。

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