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  • 執筆者の写真高森明勅

皇室典範は直系の皇太子と傍系の皇嗣を明確に区別している!


皇室典範は直系の皇太子と傍系の皇嗣を明確に区別している!


皇室典範に「皇嗣」という語が出てくる(第4条・第8条)。

この言葉は、その時点で皇位継承順位が第1位の皇族を意味する。従って、直系の「皇太子」「皇太孫」(皇太孫は、皇太子が不在の為に皇位継承順位が第1位になった皇孫)、更に傍系の「皇嗣」の全てを包含する。


皇太子(皇太孫)と傍系の皇嗣にはハッキリと区別がある。この点について以下のような説明がある。


「分かりやすい例を言うと、天皇が未婚の場合や結婚されても男子がいない場合に、天皇に弟がいる場合、その弟は、その時点では皇位継承順位第1位の男子皇族ということになるので皇嗣になるが、天皇の子ではないので皇太子にはならないことになる。


そしてこの皇嗣は、その後天皇が結婚され男の子がお生まれになった場合、皇位継承順位第1位から第2位になるので皇嗣ではなくなり、その点で次の天皇であることが確定している皇太子とは異なる立場、身分ということになる」(園部逸夫氏『皇室法入門』)


両者の違いは、「次の天皇であることが確定している」立場、身分とそれが不確定的な立場、身分という違いだ。


皇室典範を見ると、皇太子・皇太孫は皇籍離脱の可能性が100%ないお立場として規定されている(第11条第2項)。これは「次の天皇であることが確定している」お立場として当然だろう。


一方、傍系の皇嗣の場合は、「やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により」(ご本人の意思に反しても)皇籍を離脱する規定になっている。


ちなみに、「やむを得ない特別の事由」とは「懲戒に値する行為があつた場合その他皇族としてその地位を保持することを不適当とする事情をいふ…」(法制局「皇室典範案に関する想定問答」)。


「次の天皇であることが確定している皇太子」と「その時点では皇位継承順位第1位」であるに過ぎない傍系の皇嗣では、このように皇籍離脱の可能性の有無という決定的な違いがある。


そうした違いがあるからこそ、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」では、「皇嗣となった皇族に関しては、皇室典範に定める事項については、皇太子の例による」(第5条)という規定を、改めて追加する必要があった(元々違いがなければ、このような条文は不要)。


既に挙行された「立皇嗣の礼」は、あくまでも秋篠宮殿下が傍系の「皇嗣」=「その時点では皇位継承順位第1位」であられる事実を内外に明らかにしたにとどまる。


「次の天皇であることが確定している皇太子」と同じお立場に移られたのでは決してなかった。

そこはくれぐれも勘違いしてはならない。

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