top of page
  • 執筆者の写真高森明勅

皇位継承上の過去の異例を繰り返さない為の皇室典範の規定


皇位継承上の過去の異例を繰り返さない為の皇室典範の規定皇位継承上の過去の異例を繰り返さない為の皇室典範の規定

よく知られているように、過去の皇位継承において平安時代の第59代・宇多天皇、第60代・醍醐天皇の異例のケースがあった。


宇多天皇はひと度、臣籍に降下され、3年ほど(884年~887年)の後に皇籍に復され、天皇として即位された。この宇多天皇が臣籍にあられた期間にお生まれになり(885年)、父宮と共に皇籍に入られ、宇多天皇の次の天皇として即位されたのが醍醐天皇であられた。


勿論、ご本人方には何の非もない。

しかし、まさに史上、空前絶後の異例・変則の出来事だった。にも拘らず、これをあたかも踏襲すべき先例・前例であるかのように見なして、全く事情が異なる旧宮家プラン(宇多天皇・醍醐天皇は共に天皇のお子様〔1世〕だが、旧宮家の場合、天皇との血縁が20世以上〔!〕も離れており、前者が皇籍から離れていたのは僅か2・3年だったのに対し、後者は既に80年近く〔!〕になる等々)を正当化する、常軌を逸した議論もある。


しかし、皇位継承のルールが初めて法定された明治の皇室典範において、こうした前近代の異例を今後、二度と繰り返してはならないとの観点から、制度化が図られた。


「(明治の)皇室典範は、今後再びかかる(宇多天皇などの事例のような)名分大義の乱脈の起り能(あた)はざる様、皇族にして一旦(いったん)臣籍に降下せられた者は復籍して皇族となり能はざる事を厳規したのである」(里見岸雄氏『天皇法の研究』)


現在の皇室典範でこの趣旨を踏襲しているのは次の条文だ。


〇第15条

皇族以外の者及びその子孫は、女子が皇后となる場合及び皇族男子と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。


この条文の趣旨については、これまでも繰り返し引用しているが、法制局(内閣法制局の前身)の「皇室典範案に関する想定問答」に以下のように述べている(括弧内は原文のママ)。


「臣籍に降下したもの及びその子孫は、再び皇族となり、又は皇族の身分を取得することがない原則を明らかにしたものである。蓋〔けだ〕し、皇位継承資格の純粋性(君臣の別)を保つためである」


ちなみに、同条の改正案について、目下の私見は以下の通り(以前に公表した内容を少し手直しした)。


〇皇族以外の者及びその子孫は、天皇又は皇族と婚姻する場合を除いては、皇族となることがない。


これによって、女性天皇・女性宮家を認めても「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)」は厳格に守ることができる。逆に、この原則を踏み破って、「臣籍に降下した者及びその子孫」が“婚姻によらずに”「皇族の身分を取得すること」を認める制度(旧宮家プラン)こそ、(「門地差別」や当事者の意思などの決定的な問題を一先ず考慮の外に置いても)


「皇位継承資格の純粋性(君臣の別)」を損ない、「名分大義の乱脈」を惹(ひ)き起こしかねない。


追記

6月23日、プレジデントオンライン「高森明勅の皇室ウォッチ」が公開されました。


bottom of page