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  • 執筆者の写真高森明勅

皇位継承の安定化への議論で土台とすべきいくつかの「数字」



目の前に迫る皇位継承の行き詰まり、皇室存続の危機にいかに対処すべきか。

その危機感、問題意識を持たない人とは、残念ながら建設的な議論は期待できないだろう。


その前提を共有できる人たちの為に、改めて議論の土台とすべきいくつかの“数字”を、おさらいしておく。


まず、過去の皇位継承の事例の中で、正妻以外の女性(側室)から生まれた方々が占める大きさについて。


帝国学士院編『帝室制度史』第3巻によれば55例。しかし、実際には非嫡出なのに嫡出とカウントした4例があり、又、大正天皇が抜けている。なので、それら合わせると60例になる。神社本庁教学研究所編『皇室法に関する研究資料』では52例とする(藤本頼生氏執筆)。これらの数字に対しては無論、もっと別の数え方もできるだろう。


更に史実性を考慮すると、それらの方々の比率を算出する場合に分母となる数字は、126代から一定数を除く必要もある。そうした細かい議論は一応、横に置いても、非嫡出による継承が過去において大きな比重を占めた事実は否定できない。


これに対して、医療技術の水準が低く、乳幼児の死亡率が高かった時代の例は説得力を持たないという指摘がある。そこで北朝の天皇も含め、女性天皇や配偶者を持たなかった事例を差し引いて、過去の天皇の正妻が男子を生まなかったケースを点検すると、僅か31代、全体のうちの26.5%しかなかった、という話になっている。


その数字を前提にして、「4乃至(ないし)5の宮家を常に確保し続けることによって、側室なくとも男系継承は確率論的に可能である」(竹田恒泰氏。『伝統と革新』創刊号、平成22年)との結論が示されていた。


これについて、私自身が史実性にも配慮して、改めて点検すると35.4%という結果になった。

これは、未婚や早逝の例、史料不足の例などの他に、正妻の特定が難しい例とか、結果的に正妻が複数になった例など、微妙な判断を要する事例も含まれる。その為に、分母・分子の数字の取り方で、異なる答えも出てくるだろう。


しかしいずれにせよ、先の数字(26.5%)は実態に照らして過少であり、史実的にはそのまま支持できない。しかも、「4乃至5の宮家を“確保し続ける”」という前提が果たして可能なのか、

という根本的な疑問がある。と言うのは、過去の宮家の実例を見ると、やはり側室によって支えられて来た事実があるからだ。


伏見宮・有栖川宮・閑院宮・桂宮の4世襲親王家の例では、約54.3%は正妻が男子を生んでおられない。現に、“永世皇族制”を採用している現代の皇室においても、昭和天皇の世代に内廷プラス秩父宮家・高松宮家・三笠宮家の3宮家があり、次の世代には更に、常陸宮家・憲仁(ともひと)親王家(但し同家は将来、三笠宮家を継承するはずだった)・桂宮家・高円宮家の4宮家が加わった。


その次の世代には秋篠宮家も。


にも拘らず、側室制度が無い状態で「男系男子」限定の縛りを維持しているミスマッチなルール(=皇室典範が抱える構造的な欠陥)によって、多くの内親王・女王方に恵まれながら、僅かな期間に今の危機を迎えている。


従って、先の“結論”は以下のように言い換えると正確になるだろう。


「側室なくして4乃至5(この数字も前提が甘いのでより多くする必要がある)以上の宮家を“常に確保し続ける”ことは不可能。なので、男系限定による継承は無理だ」と。


その上、上皇陛下の世代以降の皇室の出生率は1.2~2という厳しい数字だ。それが今後、たちまち劇的に増大すると予想するのは、余りにも楽観的すぎるだろう。


そうした現実を考慮した上で、皇室の方々のご人格やお気持ちに最大限の敬意を払い、国民の一般的な感覚からも乖離しない、将来に向けて維持可能な制度を、速やかに設ける必要がある。


私の提案は既に示している。


早くそれよりも妥当かつ実現可能な(皇室の「聖域」性を損なわず、勿論、憲法にも違反しない)対案が示されることを期待する。

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