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  • 執筆者の写真高森明勅

新年恒例の宮中「歌会始」の入選・佳作の和歌のいくつか


新年恒例の宮中「歌会始」

去る1月18日、新年恒例の歌会始が行われた。

今年のお題(勅題)は「友」。


天皇陛下の御製(ぎょせい)は「人々に早く日常生活が戻ることを願われるお気持ちをお詠みになったもの」(宮内庁解説)で、なかなか意味深長。


敬宮殿下のお歌は、歌意に淡い哀しみを感じさせる一方、調べの整いぶりは上皇后陛下に通じるのではないか。


もみぢ葉の

散り敷く道を 歩みきて

浮かぶ横顔

友との家路


今年は入選・佳作の歌からいくつか紹介する。


温もりの

残る手袋 渡されて

君は友より

夫(おっと)となりぬ

(岡山県、藤井正子氏)


卒論は

梶井だつたね

君だけが

四十二(しじゅうに)歳の

ままなる友よ

(熊本県、三浦清美氏)


※歌中の「梶井」は『檸檬』で日本文学史上に名前をとどめた梶井基次郎だろう。念のため。


友といふ

言葉を知らぬ 一歳が

泣いてゐる子の

頭を撫(な)でる

(京都府、丹羽紗矢香氏)


遠足で

見せびらかした 玉子焼き

寂しく笑つた

友よごめんね

(福岡県、野瀬雅子氏)


シャガールに

惹(ひ)かれしころを

語らへば

妻は友へと

しばし返りぬ

(山形県、三浦大三氏)


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