これまでの歴史から抽出できる天皇のお立場は、およそ以下の3つに整理できる。
①皇室の祖先神・天照大神に由来する系統と精神の正しい「世襲」継承者
②国家の公的秩序の頂点
③国民結合の中心
今の憲法では、これら3つのお立場について―
①については「皇位は世襲」(第2条)、
②については「日本国の象徴」(第1条)、
③については「日本国民統合の象徴」(同上)
―という表現で、それぞれ規定しているように受け取れる。
宮中の正月行事にも、上記の3つのお立場がそのまま映し出されている。
(1)皇室祭祀として1年の最初に行われる「四方拝(しほうはい)」と「歳旦祭(さいたんさい)」(共に1月1日)は、①に対応する行事だ(憲法上、国事行為でも公的行為でもない、その他の行為とされる)。
(2)憲法上の国事行為の中で唯一(!)の恒例「儀式」である「新年祝賀の儀」(同上)は、天皇が公的な秩序において立法・行政・司法の三権より“上位”に位置付けられ、かつ形式の上でわが国を対外的に“代表”する地位にいらっしゃることを表示し、②に対応する行事だ。
(3)私がプレジデントオンラインの昨年12月の「高森明勅の『皇室ウォッチ』」で紹介したような経緯で(そこでは昭和天皇ご自身のお気持ちが決定的な役割を果たした!)コロナ禍前の形に定着した「新年一般参賀」(1月2日)は、③に対応する行事だ(公的行為とされる)。
「天皇とは何か」について真摯に向き合おうとする場合、こうした具体的な手がかりに目を向ける必要がある(ちなみに皇位継承に伴う儀式についても、「剣璽(けんじ)等承継の儀」と①、「即位の礼」と②、「大嘗祭(だいじょうさい)」と③がそれぞれ対応する)。
追記
1月2日の参賀には、長男、元日にサプライズでシンガポールから帰国した長女、更に次男の他に、長男の長女、つまり私の孫娘(今年3月で3歳)も加わった。初めて3世代揃っての参賀だった(但し記帳のみだったが)。