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畏れ多くも上皇陛下に悪罵を投げ付けるに等しい男系言論

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 12 分前
  • 読了時間: 4分
畏れ多くも上皇陛下に悪罵を投げ付けるに等しい男系言論

「読売提言」への恐怖心から組まれた『月刊正論』7月号の特集に、私への名指しの批判(百地章氏の執筆)が載っていることを教えて貰った。


そこで、珍しくそれに少し付き合ってみた。

しかし、これ以上、貴重な時間を空費するのは勿体ない。よって、一先ずこれにて打ち止め。


⑦「極め付きは、高森氏が『皇室の伝統は男系継承ではなく、「国民と苦楽を共にする」こと』と述べていることだ(同·公式サイト、23·11·3)。

男系継承を否定するためにまったく次元の異なる事柄を持ち出したこの言いぐさなど、妄言の典型だろう」


この部分は、さすがに私も引用するのに心穏やかではなかった。

何しろ、これはそっくりそのまま(百地氏本人は恐らく自覚していないだろうが)畏れ多くも上皇陛下のご発言に向けられたものになるからだ。


「国民と苦楽を共にすることに努め、国民の幸せを願いつつ務めを果たしていくことが…皇室の伝統」。


これは、平成17年の天皇誕生日の記者会見で、小泉内閣に設置された「皇室典範に関する有識者会議」が安定的な皇位継承の為には女性天皇·女系天皇を認めることが不可欠と結論付けた報告書について、記者が「実現すれば皇室の伝統の一大転換となります」(!)と問いかけたのに対する、上皇陛下のお答えだった。


上皇陛下は、女系容認=皇室の伝統の転換(言い換えると男系=皇室の伝統)という記者の間違った先入観に対して、制約されたお立場の中でも誤解の余地なく、“ノー”を突きつけられた。


その誤った固定観念を否定する意味合いで、「国民と苦楽を共にする」在り方こそが“真の”「皇室の伝統」というご自身のお考えを、はっきりと打ち出されたのだ。

私の指摘も勿論、それを踏まえたものだった。


百地氏は、それに対して「まったく次元の異なる事柄を持ち出したこの“言いぐさ”など、“妄言の典型”」と、悪罵を投げ付けた。これはさすがに上皇陛下に対して、非礼·不敬の度が過ぎた。


なお、同氏は同じ文章で漫画家の小林よしのり氏についても批判している。

だが平成25年6月12日に、小林氏は当時の風岡典之·宮内庁長官から面会を求められ、同長官を通じて上皇后陛下からご自身のご著書を賜っている。


そのご著書には、上皇后陛下がわざわざご自身で複数の付箋を貼り付けておられる(風岡長官は、この「ご自身で」という事実を繰り返し強調したらしい)。それを小林氏のご厚意で、

私も(風岡氏らの名刺と一緒に)拝見させて戴いた。


なるほど、皇后(当時)という窮屈なお立場でも、このようなメッセージの伝え方があるのか、と驚いた。付箋箇所を見ると、上皇后陛下は明らかに『天皇論』などによる小林氏の表現活動に

共鳴され、励ましておられることが伝わる。


しかも、この種の対外的なアクションについて、上皇后陛下が上皇陛下に無断でなさることは、

およそ想像しにくい。百地氏はこの事実をどう捉えるつもりか。


又、同じ特集には愛子天皇待望論に反発した故·安倍晋三氏のこんな発言も載せられている(阿比留瑠比氏)。


「悠仁さまから皇位を奪うことになる。それは、簒奪(さんだつ)であり、あり得ない」


皇室が願われ、圧倒的多数の国民が望む、安定的な皇位継承を可能にする皇室典範の改正

(それが実現していれば、敬宮殿下はとっくに皇太子になっておられる)を、自分で“確信犯”的に潰した張本人が、もし本気でこんな発言をしていたとすれば、それこそ神罰ものの暴言だろう。


天皇陛下のお子さまでいらっしゃる敬宮殿下が、“親から子へ”と直系で皇位を継がれることに対して、簒奪(=臣下が君主の地位を奪い取ること)とは呆れる。


それを得意げに紹介する人間の感性も疑う。

更に、同特集には竹田恒泰氏の文章も見える。


彼は旧宮家養子縁組プランの首唱者を自任し、かねて物心つく前の“赤子”のうちに特別養子縁組するのが「ベスト」と主張している。幸い、同氏には昨年、男子が生まれているらしい。


率先垂範、先ずは自分の長男を養子縁組の第1候補として名乗りを上げたらどうか。

それをしなければ、これまでの皇位継承問題を巡る威勢のいい言論は、全て無責任で身勝手な放言と見られてしまう。名乗りを上げたうえで、それが「分断」なく国民に受け入れられるかどうかを、しっかりと見極めたらよい。


(了)

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