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故・安倍晋三元首相は「旧宮家の復活を明言していた」??

執筆者の写真: 高森明勅高森明勅

故 安倍晋三元首相


産経新聞(7月19日付)のオピニオン欄に、次のような記述を見かけた。



「男系男子による皇統の継承と旧宮家の復活を明言していた大物政治家が安倍晋三元首相だった」

(竹内久美子氏)。


ところが、故・安倍元首相は平成31年3月20日の参院財政金融委員会で、「旧宮家の復活」を明確に「否定」(!)しておられた。その事実を当時、産経新聞(同年3月21日付)は「旧宮家の皇族復帰、首相が否定的見解」との見出しで、以下のように報じていた。



「安倍首相は20日の参院財政金融委員会で、皇位継承の安定策をめぐり、戦後に皇籍を離れた『旧宮家(旧皇族)』の復帰に否定的な考えを示した。


『(旧宮家の皇籍離脱は)70年以上前の出来事で、皇籍を離脱された方々は民間人として生活を営んでいる。私自身が(離脱の)決定を覆していくことは全く考えていない』と述べた。


首相は第2次政権発足前の平成24年1月発売の月刊誌で『女性宮家』創設などへの反対を表明し、旧宮家の皇族復帰や、旧皇族の男系男子を現在ある宮家に養子に迎えることを唱えた。

(平成)29年1月の衆院予算委員会では旧宮家の復帰が皇位継承安定策の選択肢になり得るとの認識を表明していた」(記事中の安倍氏の発言は、正式な議事録の記載と少し異なるが、記事のままとした)


安倍氏の“方向転換”への産経新聞の悔しさ(!)が伝わるような記事だ。


安倍氏が国会という最も公式な場で、首相としてそれまでの姿勢を変更し、「旧宮家の復活」への

「否定的見解」を「明言」されたことは、産経新聞が報じた通りだ。にもかかわらず、執筆者(および新聞社)の政治的スタンスがどうであれ、産経新聞自身も報じた事実と正反対(つまり虚偽!)の記述を、そのまま載せた産経新聞のファクトチェックの手続きは一体、どうなっているのだろうか。


先日(拙著『「女性天皇」の成立』刊行後、安倍氏が亡くなられるより前)、安倍氏とやり取りされた政治家ご本人から、こんな話を聞いた。


安倍氏に直接、「旧宮家の関係者で皇籍を取得する意思がある方はいらっしゃるんですか?」と尋ねたところ、「それが、いないんです」という答えだったと。安倍氏はきっと正直な方だったのだろう。


安倍氏の方向転換の背景には、こうした事情があったと考えるのが自然ではないか。



追記

今回の参院選での、各地における候補者および関係者などへの個別のアプローチの最終集計の結果は、以下の通り。


全国35都道府県。

345件。

報告人数106人。


これは目覚ましい成果ではあるまいか。力を尽くされた各位の使命感に、心から尊敬と感謝の気持ちを捧げる。


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