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  • 執筆者の写真高森明勅

有識者会議事務局は「門地による差別」解消策を見つけられず


皇位継承問題、有識者会議事務局


皇位の安定継承という本来の課題から逃げ、不整合な見掛けだけの皇族数の確保策でお茶を濁した有識者会議。

その事務局は、旧宮家子孫の養子縁組プランが憲法が禁じた「門地による差別」に該当することへの対処が不可欠という点は、さすがに気付いていた。

そこで、それへの対策を色々検討したことが「事務局における制度的、歴史的観点等からの調査・研究」という報告文書から分かる。



「平等感」という問題意識



同文書では、客観的な「門地による差別」の問題を主観的な「平等感」という丸めた表現に敢えて言い換えている(憲法違反という根本的な問題に繋がるのを避けた表現にしたかった為だろう)。


「養子縁組を恒久制度化し、例えば、昭和22年に皇籍離脱した元皇族の男系の血筋の男子…に限って養子となることができると規定した場合には、旧11宮家の男系男子が他の国民と異なる立場にあるという見方を恒久化することにつながりかねない。これは、国民の間での平等感の観点から問題が大きいのではないか」


「一定の期間を限って制度化したとしても、法律の明文で規定する以上は、養子となり得る者として限定される国民と他の国民の間の平等感の問題はあるのではないか」と。


そこで、「平等感の問題」への対策として「個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能にする」という“奇策”を掲げている。同プランの利点について以下のように述べる(33ページ)。



個別対処という“奇策”



「個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能とする法律を制定する場合には、養子となり得る者をあらかじめ法律で類型的に規定するわけではなく、あくまで養子縁組を行う意思の合致した特定の当事者のみが対象となることから、国民の間における平等感の問題は生じないのではないか」と。


しかし、同プランの問題点も公平に載せる。以下の通り。


「個別の養子縁組の機会を捉えて養子縁組を可能にする立法を行う場合、養子縁組の成立に向けた様々な準備は、皇室典範により養子縁組が禁止されている状況の中で行わなければならないことになる」


「権力の分立や、国家に対する国民の自由・平等の確保という観点から、法律は一般性(不特定多数の人に対して、不特定多数の事案に適用されること)を有していなければならないとする考え方もあり、このような個別処分的立法は難しいとの考え方もあるのではないか」


要は無理という話。


同会議の最終報告書に、この点への言及が全く抜け落ちているのは、どのような政治的配慮が働いたにせよ、余りも不誠実で無責任な態度ではないか。



「奇策も無理」という結論



しかも、事務局の報告文書はもっと本質的な問題点に触れていない。

もし「あらかじめ法律で類型的に規定」せずに、「あくまで養子縁組を行う特定の当事者のみ」の自由意思に委ねた場合、旧宮家子孫や、より広く「皇統に属する男系の男子」以外(!)の者(女性の場合もあり得る)との養子縁組について、当事者の「意思の合致」が成り立ったらどうするつもりなのか。


その時に、(一方で国民も養子縁組で皇籍を取得できる可能性を掲げながら)血筋・家柄を根拠に「法律を制定」“しない”という対処をするとしたら、政府・国会による「門地による差別」が公然と行われたことになろう(女性を排除するなら「性別による差別」も)。


養子縁組プランを実現する為には、憲法そのものを改正して「国民平等」の原則を破棄するしかない。だから結局、無理という結論になる。

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