先日、行われた敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下の記者会見は、まことにご立派だった。
幅広い国民に、清く爽やかな感動が広がった。
メディアを覗くと、敬宮殿下のご会見の機会を従来の例より増やして欲しいとの声も、あちこちで見かける。しかし一方、敬宮殿下ご自身のご将来は、今も“引き裂かれた”ままだ。
「女性天皇」か一般国民か
小泉内閣の時の有識者会議の検討結果では、やがて天皇になられる制度改正が提案されていた。
しかしその後、久しく制度改正は実現していない。
今の皇室典範のままだと、ご結婚と共に皇族の身分を離れ、一般国民の仲間入りをされることになる。更に、今回の有識者会議の報告書には、ご本人はご結婚後も皇族の身分にとどまられる一方、ご結婚相手やお子様は皇族の身分を取得できず、一般国民として位置付けられるという、“家族の一体性”をぶち壊す無茶苦茶なプランが打ち出されている。
敬宮殿下は20年間もの歳月、政府の「先延ばし」と国会の怠慢、国民の無関心のせいで、ご自身の未来が見えない状態のまま、不安を抱えて過ごしてこられた。
今の憲法のもとでは皇室典範の改正は国政事項。
なので、ご本人や皇室の方々のご努力が及ばない領域に属する。長年にわたる「政治」の無為無策ぶりは、残酷この上ない話だ。
天皇陛下のご養育方針
では、天皇陛下ご自身は、敬宮殿下のご養育に当たり、どのような方針で臨まれたのか。
これについて、共同通信の大木賢一記者が次のような記事を書いておられる(47NEWS、3月30日、10時02分配信)。
「天皇陛下は05年(平成17年)の記者会見で愛子さまの養育方針について質問され、『どのような立場に将来なるにせよ、1人の人間として立派に育ってほしいと願っております』と答えた。
当時は、小泉政権により女性天皇実現を目指した皇室典範改正が議論されていた時期。愛子さまが『将来の天皇』となる可能性も考えられていたことがうかがえる」
確かに「どのような立場」という表現は、現行典範の規定とは“違う「立場」になられる”可能性を
考慮しておられなければ、出てこないだろう。そのご養育の成果が先日の、過去のお苦しみを見事に乗り越えた、光輝くようなご会見に結実したと申し上げても、敢えて過言ではないはずだ。
「子ども」という詩
天皇陛下はその時のご会見で、アメリカの家庭教育学者のドロシー・ロー・ノルト(ホルト)の「子ども」という詩を紹介され、「家族というコミュニティーの最小の単位の中にあって、このようなことを自然に学んでいけると良いと思っております」とおっしゃっていた。
その詩を以下に掲げる。
批判ばかりされた 子どもは
非難することを おぼえる
殴られて大きくなった 子どもは
力にたよることを おぼえる
笑いものにされた 子どもは
ものを言わずにいることを おぼえる
皮肉にさらされた 子どもは
鈍い良心の もちぬしとなる
しかし、激励をうけた 子どもは
自信を おぼえる
寛容にであった 子どもは
忍耐を おぼえる
賞賛をうけた 子どもは
評価することを おぼえる
フェアプレーを経験した 子どもは
公正を おぼえる
友情を知る 子どもは
親切を おぼえる
安心を経験した 子どもは
信頼を おぼえる
可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じとることを おぼえる
敬宮殿下のご会見の背後にどのような日々があったのか、少しだけ窺い知ることができる気がする。
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