天皇陛下のお誕生日に際してのご会見でのご発言では、大規模災害に関わる言及に少なくない部分を割いておられた。
それだけ、陛下のご懸念が深いことを示している。
これについても、陛下の視野は国内だけでなく、自ずと海外にまで及んでいる。
《引き続き被災地に心を寄せていく》
「東日本大震災の発生から間もなく11年を迎えます。この震災により、2万人を超える数多くは方が亡くなったり、行方不明になったりしたことは、今思い出しても深く心が痛みます。
その後の復興の過程で、人々の生活や産業を支える社会基盤の整備等は進んだものの、精神的なサポートを必要とする人が近年になってむしろ増えていると伺うなど、本当の意味での復興はまだ道半ばにあるものと思います。私は、雅子と共に、引き続き被災地に心を寄せていくつもりです」
―「精神的なサポートを必要とする人が近年になってむしろ増えている」という、一般に見逃されがちな事実にまで、しっかりと目を届かせておられる。陛下が被災地の実情に細やかにお心を配って下さっていることが分かる。
その上で、「私は、雅子と共に、引き続き被災地に心を寄せていくつもりです」と言い切っておられる。上皇・上皇后両陛下が現地にお寄せになっていたお気持ちを、いささかもゆるがせになさらず、まっすぐに受け継がれていることが窺えて、有難い。これこそ、伝統と品格を備えた世襲の君主制のみが持ちうる、慈愛の自ずからな継承だろう。
《故・宮崎淳氏の献身など》
「思い返せば、東日本大震災直後には、現地に駆けつけたボランティアに多くの被災者が勇気付けられたものと思います。海外の多くの国々からも支援物資等が届けられ、ボランティアが被災地に駆けつけてくれました。
先月の海底火山の噴火による被害が伝えられるトンガの皆さんからも、様々な支援を頂いたことは記憶に新しいところです。その時の感謝の気持ちは今なお色あせるものではありません。ここに改めて、この度のトンガの噴火により被災された方々に心からのお見舞いをお伝えいたします。
東日本大震災の発生と同じ平成23年、トルコで起きた震災に日本から支援活動のために赴いていた宮崎淳(みやざき・あつし)さんが、余震により亡くなりました。舗装道路などのインフラも十分でない被災地において、見ず知らずのトルコの人々のために力を尽くし、亡くなったとして、当時のギュル大統領は、トルコ国民の心を動かす献身的な活動をした宮崎さんをいつまでも忘れない、と上皇陛下に親書を送られました。
そして、以後、トルコの各地で宮崎さんの名を冠した公園や学校が開設されているとの報道に昨年接したことも、トルコの人々の温かい気持ちと共に印象に残りました。
災害により困難な状況に陥った人々を助けようと尽力する災害ボランティアの精神はまことに尊いものです。日本の多くの人々が国内外で災害ボランティア活動に従事してくれていることに敬意を表したいと思います」
―先頃、激甚な噴火災害に見舞われたトンガからの、東日本大震災時におけるわが国への支援に対する感謝を、災害へのお見舞いの気持ちと共に、今のタイミングで改めてお伝えになられた、陛下の思いやりの深さ。
更に、故・宮崎淳氏を巡るトルコ大統領から上皇陛下への親書と、同国の人々の気持ちを伝える
ニュースを取り上げられることで、「災害ボランティア」の意義を抽象論ではなく、感激を伴う実話として語られる陛下の姿勢には、深く共感できる。トンガの件もあわせて、国境を越えて織り上げられる“善意のタペストリー”を目の当たりにするようだ。
《被災した人々に寄り添い…》
「我が国では、今後、いくつかの大きな地震の発生が予測されています。
また、近年、大きな被害をもたらす豪雨災害等が頻発しており、発災時に多くの人が助けを必要とする場面はより多くなると予想されます。
そのため、私たち一人一人が防災や減災の意識を高め、災害に対して自らの備えをするとともに、どこかで災害が起きたときには、一人一人が、自らのできる範囲で被災した人々に寄り添い、その助けとなるべく行動できるような社会であってほしいと願います」
―大地震をはじめとする大規模な災害は、今や誰にとっても決して他人事ではない。陛下の切実なお言葉でそのことを改めて痛感する。
「自らの備えをするとともに、どこかで災害が起きたときには…」とのお呼び掛けは、各自がくれぐれも銘記する必要があるだろう。
2月11日の「くにまもり演説大会」で防災・減災への心構えを訴え、見事に準優勝されたラジオ・アナウンサーのSさんも、彼女の提案で番組内に新設されたという(災害に)「備えましょう」
というコーナーの中で、陛下のお呼び掛けについて紹介されてはいかがかと思う。それとも、既に紹介済みかな。
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