去る1月24日、自民党は皇族数の確保などについて検討する初めての懇談会を開いた。
その会合後、茂木敏充幹事長は以下のように述べた。
「ある意味、ご意向をお持ちの皇族方がいらっしゃらない状況で、急に皇室典範の改正なり、また、特例法を作るということはなかなか想定しがたい」と(TBS NEWS1月24日、21時20分配信)。
これは驚くべき発言ではないか。
“皇位の安定継承”どころか、大幅に後退した“皇族数の確保”の為でさえ、「皇室典範の改正なり、特例法を作るということ」は欠かせない。
それが先送りできない「喫緊の課題」ではあることは、さすがに有識者会議の報告書でも繰り返し強調している。
何より、国会自身が全会一致で議決した皇室典範特例法の附帯決議には、「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家等」の検討が「先延ばしすることはできない重要な課題である」と
明記していたではないか。
しかも、「ご意向をお持ちの皇族方がいらっしゃらない状況」とは何事か。
上皇陛下ご自身が、全国民に示された平成28年8月8日のビデオメッセージの中で、皇位の安定継承を願うお気持ちを疑問の余地なく明らかにされているではないか。
それ以前から、側近に仕える侍従長の発言や宮内庁から内閣への働きかけを通して、皇位の安定継承を願う皇室の「ご意向」は知られていたことだ。
それをひたすら先延ばしし続けておきながら、政府の検討結果が(極めて不十分な内容ながら)伝えられた今、非礼にも皇室のお気持ちをねじ曲げて、何を言い出すのか(これも虚偽に基づく皇室の“政治利用”だろう)。
もとより、内親王・女王がご結婚後、配偶者が国民男性のままでお子様も国民といった無理筋の制度は望んでおられないだろうし、旧宮家系男性を養子に迎えようとする宮家もにわかに思い浮かばない。
しかしそれは、国権の最高機関とされる国会の良識に従って是正すれば良いだけの話だ。
そもそも、当事者の立場になって想像すれば、ご自身の将来が引き裂かれた状態のまま、
長年放置され続けていることの“残酷さ”に気付くはずだ。
先の山東昭子参院議長の「いつまでとか、余り早くというようなことではなしに、やはり慎重に」という発言と共に、国会での議論の先行きに不安を抱かせる。
政界にはこの期に及んでもなお、問題への“着手”すら更に先延ばししようと企んでいる人々がいるらしい。