12月22日、皇室制度のあり方を検討していた有識者会議の報告書が岸田首相に提出された。
そこでの具体的な提案は以下の2点。
①内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持される。
但し、現在おられる方々への適用は、これまで現行制度下で人生を過ごして来られたことに十分な留意が必要。
②皇族には認められていない養子縁組を可能とし、国民の中の皇統に属する男系の男子を皇族とする。但し、該当者は皇位継承資格を持たない。その子孫に皇位継承資格が認められるかどうかは未定。
《今の内親王・女王方には適用しない?》
同会議の設立目的だった皇位の安定継承とは全く無関係な提案であり、テーマをすり替えた皇族数の確保策としても、まともに採用できるレベルのプランではない。
①は、現在の内親王・女王方について曖昧な表現になっている。
勿論、強制は避けるべきながら、もしそれらの方々への適用を一律に控えるのであれば、ご結婚と共に皆様、国民の仲間入りをされる。
皇室にとどまる悠仁親王殿下と同じ世代の女性皇族は不在となる。
それでどうやって、適用対象となる“次の”世代の女性皇族がお生まれになるというのか。
悠仁殿下のご結婚と女子のご誕生に全てを賭けるという、乱暴この上ない話になってしまう。
女性皇族の配偶者やお子様が国民というプランの無理筋ぶりは、改めて指摘するまでもあるまい。厳格であるべき皇室と国民の区別をないがしろにするにも程がある。
《養子に継承資格なく、子孫は未定?》
②についても、養子は男系男子として皇族の身分を取得しながら、皇位継承資格を持たず、その子孫の継承資格も未定(!)。
しかし、もともと皇位継承資格を持たない養子の子孫に継承資格を認めることは、制度として整合性を欠き、正当性も保てない。
ならば、国民として憲法によって保障されている、あらゆる自由や権利を犠牲にしてまで養子になることの意味は、単に目先の人手不足を“取り繕う”以外ないことになる。
当事者の人格の尊厳やかけがえのない人生を、一体どう考えているのか。
同案を「安定的な皇位継承と皇族数の確保という2つの要求を満たす」と評する向きもある(八木秀次氏、産経新聞12月23日付)が、中身を理解できているのだろうか。
しかも、憲法が禁じる「門地による差別」に該当し、国民平等の原則に反するので、憲法上、制度化は許されない。
政府に設けられた諮問機関の正式な報告書とは思えない不誠実で粗悪な内容に驚く。
なお、同報告書への私のコメントが共同通信から配信された。
《上皇陛下への裏切り》
12月23日、上皇陛下におかれては、史実性の確かな歴代天皇の中で最長寿の88歳をお迎えになった。国民の1人として心からお祝い申し上げ、末永くお健やかにご平安に過ごされますことを祈り上げる。
皇位の安定継承を切実に願っておられる上皇陛下のお気持ちを全く裏切る報告書が、お誕生日の前日というタイミングで提出された無神経さに対し、同じ国民として深くお詫び申し上げる。
上皇陛下のおことばを改めて銘記したい。
「これからも皇室がどのような時にも国民と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました」(平成28年8月8日)
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