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  • 執筆者の写真高森明勅

皇位の安定継承への可能性を閉ざす最大の原因は国民の無関心


皇位の安定継承への可能性を閉ざす最大の原因は国民の無関心

読売新聞の一面トップ記事。次のような見出しが躍る。


「皇室典範改正を検討」

「『女性天皇』『自ら退位可能』」

「自民方針/国民論議狙い」


決してフィクションではない。平成13年5月9日付朝刊に載った記事だ。リードは次の通り。


「自民党は8日、皇室制度について定めた基本法である皇室典範について、女性の皇位継承権や本人の意思による天皇の退位を認める方向で改正を検討する方針を固めた。

小泉首相(自民党総裁)が総裁直属機関として党内に設置した『国家戦略本部』(本部長=小泉総裁)で近く検討を開始する。政権与党が皇室典範改正を本格的に検討するのは初めて」


この年の12月に、天皇・皇后両陛下(当時は皇太子・同妃)のご長女、敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下がお生まれになったことは、改めて言うまでもあるまい。


《皇室典範改正が頓挫》


もし、この時に首尾よく典範改正が実現していれば、どうなっていたか。

上皇陛下のお苦しみも無かったし、敬宮殿下の将来が、天皇として即位されるか、ご結婚と共に国民の仲間入りをされるか、真っ二つに引き裂かれたまま放置されるという、残酷この上ない事態も避けることが出来たはずだ。


しかし、皇室典範の改正は頓挫した。その後は、「世襲」の「象徴」天皇制度を維持し、皇室の存続を願うなら、必ず解決しなければならないはずの課題を、政府も国会もひたすら“先延ばし”し続けて来た。


その結果、遂に上皇陛下ご自身によるご苦渋のビデオメッセージを拝する局面を迎えたのだ。

憲法の制約に配慮されつつ、ギリギリの形で国民へのメッセージが発せられた。


そこで示された“宿題”は2つ。

1つは、ご譲位を可能にする恒久制度を整えること。

もう1つは、皇位の安定継承を目指した制度改正だ。

振り返ると、どちらも平成13年の自民党の「方針」に重なる。と言うよりも、あの時の「方針」自体が、皇室のご意向を汲んだ結果だった可能性がある。


《20年間の無為無策と無関心》


敬宮殿下がお生まれになってから、今年で既に20年。

その間、政府・国会は一体、何をしていたのか。長年にわたる無為無策ぶりは呆れるばかりだ。しかし、そのような政治の無為無策が、何ら咎められることなく見過ごされて来た。それは何故か。国民が無関心だった為に他ならない。


社会学者の大澤真幸氏が次のような指摘をされていた。


「天皇制の支持率は高いのに、日本人が、この制度の持続可能性についてあまり本気で考えず、なるようになるさというようにしか見ていないのは不思議なことです」(『むずかしい天皇制』)と。


「なるようになるさ」でこの20年間を無駄にした。その最大の犠牲者は、ご自身の将来が不確定な状態のままの、敬宮殿下をはじめとする内親王・女王方であり、皇位継承の行く末を深く案じておられる皇室の皆様に他ならない。


挙げ句の果てに、一家丸ごと養子縁組とか、皇位継承資格を認めない養子縁組、内親王・女王方はご結婚後も皇族の身分のままでありながら、ご結婚相手やお子様には皇族の身分を認めないという、ほとんど正気を疑うようなプランの数々が、平然と内閣の諮問機関の検討対象にされる有り様だ。


それでも国民は、今後もずっと「なるようになるさ」と無関心を決め込むつもりか。

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