目先だけの皇族数の確保で皇室の危機を糊塗(こと)しようと図る有識者会議。
内親王・女王方が結婚後も皇族の身分に残って戴く一方、配偶者やお子様には皇族の身分を認めない方向で検討を進めるという(産経新聞、8月6日、22時31分配信)。
これは余りにも非常識なプランではあるまいか。
内親王・女王は皇族で、その配偶者の男性が国民のままという世帯は、少なくともわが国における皇室と国民の“区別”に対する一般的な感覚に照らして、極めて不自然と言わざるを得ない。
そもそも、配偶者が国民のままならば、憲法第3章が国民に対して保障する権利や自由は、そのまま保障されなければならないはずだ。
特別職の国家公務員を新たに設けて、皇室のご公務を分担して貰おうとしても、勿論、それを辞退する自由がある。公務員でなければ、“国民として”政治活動の自由も制限されないだろう。
経済活動、宗教活動などの自由が最大限尊重されるべきなのは、勿論だろう。
しかし、そのことと、日本国の象徴、日本国民統合の象徴であられる「天皇」、及びそのご近親によって構成される皇室に求められる、「聖域」性、政治的・宗教的中立性などとの両立は可能なのか。それとも国民なのに、憲法上の権利や自由を法的根拠に基づかず、暗黙の「空気」で抑圧するつもりなのか。
男性皇族の配偶者やお子様は勿論、皇族とされる。
一方、女性皇族の配偶者は(ご結婚の相手が“女性だから”というだけの理由から)そのお子様と共に、皇族の仲間入りを許さず、しかも国民としての権利・自由も事実上、大幅に制限するという、差別的・侮辱的なプランを考えているとすれば、そのような悪条件を跳ね返して、敢えて結婚を望む国民男性がたやすく現れるとは、楽観できない。
内親王・女王方はご結婚されなければ、そのまま皇室にとどまられる。結果的に皇族数の減少を防ぐことができる。有識者会議の本当の狙いはそちらなのか、と邪推したくなるほど悪質なプランと言わざるを得ない。
このプランは、同会議の本来の目的である「皇位の安定継承」に何ら寄与しない。
だけでなく、むしろそれを致命的に妨げる。
内親王・女王方は、こんな理不尽なプランの犠牲になられるくらいなら、今の制度のままご結婚と共に皇籍を離れられて、国民としての自由や権利を十分に享受されるべきではないか。
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