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執筆者の写真高森明勅

文春オンラインに登場する「宮内庁関係者」発言の“お粗末さ”



文春オンライン(6月11日、6時12分配信)の記事に「宮内庁関係者」が登場している。

この人物は、皇位の安定継承を目指す有識者会議ヒアリングでの一部の提言を踏まえて、こんな発言をしている。


(敬宮〔愛子内親王〕殿下など内親王方がご結婚後)「皇統譜に名前を残したまま夫婦として別に戸籍を持つことになると、二重戸籍となってしまいますが、皇統譜は特別なものだけに上皇陛下の退位を認めた特例法の前例に倣って『特例』として認めてもいいはずです」と。


つまり、国民男性と結婚されると、皇族の身分を離れて国民の仲間入りをされるこれまでの制度を改めて、「二重戸籍(?)」を認めよう、と言うのだ。

それによって、該当者に「潜在的な」皇位継承資格を確保するのが目的らしい。


記事に「宮内庁関係者」と書かれているので、読者は普通に「宮内庁」の職員と思い込んでしまう。しかし、本当に職員なのか。

それとも、宮内庁とどこかで僅かな接点があるだけの「関係者」なのか(例えば八木秀次氏は、自分の発言が「宮内庁関係者」等として週刊誌に掲載された、と自ら語っておられる)。

いずれにしても、中身がお粗末過ぎる。


《皇室と国民の区別を破壊》


憲法上、国民一般(その中には元皇族だった方々も勿論含まれる)とは“厳格に区別”される天皇・上皇・皇族方(第1章の適用対象)“のみ”を登録するのが、「皇統譜」。


だから「特別」なのだ。それと、国民(同じく第3章の適用対象)としての「戸籍」と、“二重”の登録を認めるなど、国家秩序の根幹を揺るがす暴挙(!)以外の何物でもない。

まさに、皇族と国民の“区別”を破壊する行為。

皇室の「聖域」性を一体、どのように心得ているのか。


現在のルールでは、畏れ多いが、一旦ご結婚によって皇籍を離れられた内親王・女王方が、万が一離婚されても、もう二度と皇族の身分に戻ることは出来ない(その場合は別に新しく“国民として”の戸籍を編製する。


「皇族の身分を離れた者及び皇族となつた者の戸籍に関する法律」第3条)。

そこまで、皇族と国民の区別は峻厳で、皇室の「聖域」性を守る為の配慮は徹底している。

こうした制度との整合性も一切、考えられていない。

軽率な思い付きにしても、無責任過ぎる発言だ。


《国民平等の原則に違反》


しかも、戸籍に登録されて国民になられる以上、(憲法第3章の適用を受けるから)憲法が禁じる「門地による差別」に当たる(第14条第1項)。


新しい身分を設けることにもなろう(同条第2項目で禁止)。

明らかに“国民平等”の原則に違反する。

上皇陛下のご譲位を可能にした特例法の場合は、あくまでも憲法の枠内の(“皇位は世襲”〔第2条〕という条件には抵触しない)措置だったからこそ認められたのであって、決して同列に論じることは出来ない。

憲法違反の「特例」が認められないのは当然だ。


《皇配=皇族の配偶者?》


なお、この記事の中で「皇族の配偶者『皇配』」という表現がある。

しかし、「皇配(又は皇婿)」は女性天皇の配偶者を意味する(男性天皇の配偶者は改めて言う迄もなく「皇后」)。

男性皇族(親王・王)の配偶者は「親王妃・王妃」(皇室典範第5条)。

女性皇族(内親王・女王)の配偶者なら、恐らく「内親王配・女王配」という称号が用意されるだろう。


週刊誌記事などの場合、“地の文”でも取材対象者の発言を取り込むことが多い。

なので、「皇配」という言葉の間違った使い方も、「宮内庁関係者(!?)」が無知だった為かも知れない。

いずれにせよ、「皇配」の意味すら知らない記者が、皇室について分かった風な記事を書いているのだ。

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