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執筆者の写真高森明勅

男系維持の為に「着床前診断」「男子受精卵移植」という提案?




「女性自身」が興味深い記事を配信(6月8日、6時06分配信)。

皇位の安定継承を目指す有識者会議ヒアリングでの、今谷明氏の提言を取り上げている。


「悠仁様の後どうなるか。

側室制を前提として、なおかつ非常に継承が難しかったこと(男系限定による継承)をどうやって維持していくか。…個人的には側室制の代償として近代医学の技術を入れた皇位継承があるべきだというふうに考える」という発言だ(「代償」という言葉は不審)。


「側室制」が無くなった事実の重大さをキチンと認識しておられるのは、さすがに歴史家だ。

しかし、それを「近代医学の技術」で補うという発想は、率直に言って驚きを禁じ得ない。


ほぼ100%男子を産む技術とは?


今谷氏が言う「近代医学の技術」とは、具体的に何か? 

同誌は生殖医療の専門医に取材を行った。


「数年前から不妊治療の現場では『着床前スクリーニング』といって、重篤な遺伝子疾患が生じる遺伝子変異や染色体異常を検査するために、体外受精させた受精卵の着床前診断を行っています。技術的には、この着床前診断で受精卵の染色体を調べ、男子の受精卵を子宮に移植すればほぼ100%男子を産むことができます」と。


「しかし、男女の選別は倫理的に大きな問題があり、日本産婦人科学会は性別の検査を目的とした着床前診断は行わないとの見解を出しています。

また、体外受精のためには卵子を針で吸引する必要があり、女性の体に負担がかかります」という。


皇室に嫁ぐ女性がいなくなる


これに対して、近現代の皇室研究を続ける名古屋大学大学院准教授の河西秀哉氏が、以下のようにコメントされている。


「もし着床前診断を想定した提言ならば、生命倫理や人権の観点から問題があると思います。

…(そこまでして男子を求めるようなことをすると)国民から支持を失い、皇室の『国民統合の象徴』という存在意義を損ねてしまう可能性もある」


又、日本中世史が専門で東京大学史料編纂所所長の本郷恵子氏のコメントは、以下の通り。


「今は側室を設けることはできませんし、子供を5~6人産む時代でもありません。

男系男子のみというルールを何も変えずに皇位継承を維持するのは難しいでしょう。

…“絶対に男子を産まなければならない”という状況を変え、悠仁さまや結婚相手の精神的負担を軽減しておかなければ、結婚そのものが困難になります」


この記事は次のように締め括られている。


「生命倫理や人権をないがしろにしてまで“男系男子”を維持しようとすれば、皇室に入ろうとする女性はいなくなり、皇室の存続はむしろ危うくなるに違いないー」


全く同感だ。


そもそも、当事者たる皇室の方々の人格やお気持ちを、一体どう考えているのか。

男系限定に固執する人々の中には、皇室に対して僅かでも敬愛の心を持っているのか、疑問を感じさせる人もいる。

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