top of page
  • 執筆者の写真高森明勅

旧宮家系の国民男性だけでなく、その家族ぐるみ皇籍を取得?

更新日:2021年5月14日


皇位の安定継承を目指す有識者会議。

第2回開催時(4月8日)には、ヒアリングに男系維持を唱える論者が多く呼ばれた。


その中で、旧宮家系の国民男性を“家族ぐるみ”で皇室に迎え入れるという、ユニークな提案をした論者がいた。これは少し驚いた。皇室と国民の厳格な区別、皇室の尊厳、「聖域」性という視点が、ほとんど抜け落ちているように感じる。


「現在、宮家でもう途絶えたところもある。そうしたところに、例えば、御家族に男系の男子のお子様がいらっしゃり、そして皆様方のお眼鏡にかなう、国民も納得できるようなきちんとした暮らしをしている御家族を選んで、その方たちが、絶えた宮家を継ぐという形も一つの形であろう」


「なぜ家族養子と言うかというと、お子様1人もしくは2人を別のところにお連れして…というのは、とてもお気の毒というか、人間の親、子どもの心情としてつらいものがある」

(櫻井よしこ氏)と。


聴取事項の問9、つまり「(皇族でない)皇統に属する男系の男子」を「①現行の皇室典範により皇族には認められていない養子縁組を可能にする」もしくは「②現在の皇族と別に新たに皇族とする」という方策について、どのように考えるか。


この設問に対し、この論者は端から「“旧宮家”の皇籍“復帰”について」と理解し(設問は“旧宮家”に限定しておらず、又、対象となる世代はかつて一瞬たりとも皇族であった事実はないので“復帰”という表現は正確ではない)、①が「現実的」と答えておられた。


その「現実的」な方策の中身が「家族養子」。しかも「宮家でもう途絶えたところ」への「養子縁組」だと言う(これは、前近代の宮家と近代以降の宮家の区別が、恐らく理解できていないのだろう)。


しかし、そもそも「もう途絶えた」宮家なら、「親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる」という、通常の意味での“養子縁組”は成り立たないのではないか。「お子様1人もしくは2人を…」と言うが、元々“旧宮家案”は、未婚の“成人”男性を想定していたはずだ。


ところが、いつの間にか未成年者にまで対象者を広げるようになった。恐らく、未婚の成人男性の中から、具体的な対象者を見つけられなかったからだろう。そうでなければ、資質も見極められず、本人に責任ある判断を期待にしにくい未成年者(「お子様」)を、よりによって皇籍取得という、この上なく重大な事柄の対象者にするという、どう考えても無理がある、不自然な発想は出て来ないだろう(それとも皇籍をよほど軽く見ているのか)。


ところが、未成年者を対象にするというそれ自体が無理筋のプランを“前提”に、「お気の毒」「親、子どもの心情としてつらい」という理由から、いっそのこと「家族」全員で皇族になって貰おうーというのは、本末転倒も甚だしい提案ではあるまいか。


そんなに「お気の毒」なら、未成年の「お子様」を対象にするという無理なプランを取り下げればよいだけの話。しかし、あくまでも「お子様」プランにこだわった挙げ句、「お気の毒」なので“家族ぐるみ”となって、家族ぐるみならば現存の宮家への「養子縁組」は至難。


かと言って「②現在の皇族と別に新たに皇族とする」やり方では、皇族として余りにも異質感が強過ぎて、その正当性(正統性)に疑問符が付きかねない。


なので、やむを得ず「もう途絶えた」宮家への“家族ぐるみ”の「養子縁組」という、奇想天外な提案に行き着いてしまったのだろう。


しかも、「皆様方のお眼鏡にかなう」「国民も納得できるような」との配慮は示されても、

「きちんとした暮らしをしている御家族ご自身が、家族ぐるみで廃絶した宮家と養子縁組(??)することを“辞退される”可能性について、全く触れておられない。


とても「現実的」な方策とは思えない。

しかし、旧宮家案を「現実的」に追求すると、このような最も“現実離れ”した結論に行き着く他ないのだろう。

bottom of page