top of page

皇室と旧宮家の「交流」?

執筆者の写真: 高森明勅高森明勅

更新日:2021年5月27日

皇位の安定継承を目指す方策として、一部で「旧宮家」案が唱えられている。


旧宮家系国民男性への新たな皇籍取得を可能にすべきだという意見だ。その場合、「旧宮家と皇室は今も緊密なつながり、ご交際があり…」(百地章氏)とされ、皇室と旧宮家の交流の場として「菊栄親睦会(きくえいしんぼくかい)」の名前が挙がることもある。だから、ご結婚という人生の一大事を介さず、そのまま皇籍を取得しても大丈夫、という言い方だ。

果たしてその実態はどうか。


去る2月26日の衆院予算委員会第1分科会で、国民民主党の津村啓介議員が次のような質問をされた。


「菊栄親睦会を含む旧宮家の方々と現皇室の交流の現状及びその法的根拠について伺いたい」と。これに対して、宮内庁の池田憲治次長の答弁は以下の通り。


「公表されている行事の中に、新年祝賀や天皇皇后両陛下のお誕生日祝賀などで、元皇族の方々がご参列になっている行事がございます。


また、菊栄親睦会という任意団体がございまして、この会は、秋篠宮皇嗣同妃両殿下を始めとする成年の皇族方、昭和22年に皇族の身分を離れた方のうち当主の系統にある方及びその配偶者、それ以降皇族の身分を離れた方及びその配偶者を会員としており、宮内庁は、皇族方の公私にわたるお世話をしているということから、同会のお手伝いをしているところでございます。


直近で申しますと、平成26年5月18日に天皇陛下傘寿奉祝菊栄親睦会大会が開催されたというふうに承知しております。こうした御交際について、特段の法的な位置づけがあるものではないということでございます」(議事速報〔未定稿〕)と。


この答弁では、菊栄親睦会の開催は「直近で」平成26年だった(念の為、これが間違いのない事実であることを、私自身も宮内庁に確認した)。


随分、前になる。


しかも、旧宮家系からは、「当主の系統の方及び配偶者」のみが「会員」とされている。ちなみに、「それ以降皇族の身分を離れた方」というのは勿論(もちろん)、ご結婚によって国民の仲間入りをされた内親王・女王方だ。


最も近くは、高円宮(たかまどのみや)家のご三女で、平成30年に守谷慧(もりや・けい)氏と結婚された絢子(あやこ)様がおられる。


それにしても、「直近」でさえ平成26年では、同会によって「緊密なつながり」は期待できないだろう。又、「新年祝賀」では、今年は新型コロナ禍のに配慮して規模を(10分の1程度に)縮小しているが、昨年だと2600人程が参列した。


「天皇皇后両陛下のお誕生日の祝賀」の場合も、宮内庁長官はじめ課長相当以上、参与及び御用掛(ごようがかり)、皇族方、元皇族、ご親族、宮内庁一般職員、皇宮警察本部職員、旧奉仕者会会員、三権の長、元長官、元参与、元側近奉仕者、元御用掛等々、かなり多くの人々がお祝いを申し上げる。その様々な人々の中に、「元皇族」も含まれているということ。


しかも「元皇族」と言うと、“旧宮家系”の人々だけ(!)を連想する人がいるかも知れない。しかし、実態はかなり異なる。池田次長は、「元皇族というのは、皇族であられた方で、皇族の身分を離れられた方」と(至って当然の内容ながら)明言されている。


つまり、旧宮家系の場合、昭和22年の皇籍離脱の時点まで「皇族であられた方」に“限る”、ということだ。例えば、日本オリンピック委員会(JOC)の前会長だった竹田恒和氏は、旧宮家が皇籍離脱した“後”に生まれたので、当然「元皇族」には該当しない(その子や孫は言う迄もない)。


旧宮家系では、同氏より“上の世代”だけに限られる。当たり前ながら、皆様ご高齢だし、人数もさほど多くはない。よって、祝賀に参列される「元皇族」は、「それ(旧宮家の皇籍離脱)以降皇族の身分を離れた方」、つまり昭和22年以降も「皇族であられた」元内親王・元女王方が小さくない比重を占められる。


以上のようであれば、旧宮家系の人々が皇室と「現在でも親接なご交際がなされている」(百地氏)などとは、とても言えないだろう。特に、旧宮家案で皇籍取得の対象と考えられている若い世代の場合、上記答弁に照らして、皇室との具体的な接点は殆(ほとん)ど

無いに等しい。

bottom of page