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  • 執筆者の写真高森明勅

建国記念の日「くにまもり演説大会」


建国記念の日「くにまもり演説大会」

2月11日、第13回「くにまもり演説大会」(主催、株式会社キャリアコンサルティング)がオンラインで開催された。私は暫く以前から審査員を仰せつかっている。


タイトルにある“くにまもり”は、狭い意味の国防・安全保障に限定していない。広く、わが国を支え発展させる為に、若者として何が出来るか、何を為すべきか、という広い捉え方だ。


応募者は全て20歳代。今年の応募者1,542名から、第1~3次にわたる審査を突破した 8名が、本選に臨む。今回は珍しく男性5名、女性3名で、男性の方が多かった。私が審査員を拝命して以来、初めて。男性が圧倒的に多く応募しても、最後まで残るのは女性が多い、 というケースが普通だった。今回は男性陣が頑張ったようだ。


大阪や名古屋から来た弁士も。一番若いのは、20歳(はたちの大学生。地方の神社の跡継ぎだ。その8名の弁士達と我々審査員、運営スタッフだけが会場に集まる。至ってコンパクトな形での開催だ。

それでも、例年の千人規模の会場を借りるより、オンラインの方が余計にコストが掛かるとか。今回、オンラインには1,600名ほどの若者が予約登録してくれたらしい(参加費、税込み2,200円)。このような企画に毎年、千数百人もの若者が身銭を切って参加し、その数がどんどん増えているのは、心強い。


弁士達が取り上げたテーマは実に多彩。農業の振興策、安全な水の大切さ、難病への取り組み、高齢者と幼児達との交流、清酒の魅力、祖父の直筆の軍歴証明書、神社の未来、香港の危機。それぞれのテーマは、弁士各々(おのおの)にとって、決して他人事(ひとごと)ではない。

例えば、僅か50人程しか患者がいない難病の治療薬の開発に、大学院で挑戦し、困難を乗り越えて、見事に成果を出した女性。患者が少ないと、開発の為の時間と費用に利益が見合わないので、製薬会社は手を出さない。だからこそ、大学が乗り出さなければという使命感が、失敗続きだった彼女を奮起させたという。


或いは、香港で中国の抑圧と戦う人達について訴えた女性は、母親が香港出身(中国人ではなく、“香港人”という自覚を持たれているらしい)。

更に、老人ホームに勤務する中で、高齢者と幼児達との触れ合いが、認知症の改善などに顕著な効果があることを実感した女性は、独学で保育士の資格を取得して転職。新しい職場で周囲に働き掛けて、高齢者と幼児の交流の場を自ら作り上げた。等々。


この大会では、弁論の上手下手(じょうず・へた)だけでなく、実際の「行動」や「成果」も重視する(勿論〔もちろん〕、約200倍の難関を突破したメンバーなので、弁論の水準もそれぞれ高いが)。審査員も多士済々。チベット出身の大学教授、多数の著書を持つ東洋史学者、都内の代表的な警察署の署長経験者、大手芸能プロダクションの重役、若手の保守論客、世界的なミスコンテストの日本事務局の方、等。皆さん、弁士の熱意に負けない真剣さで、審査に臨まれていた。


「建国をしのび、国を愛する心を養う」祝日に、このような未来の日本を担うべき“若者が主体”の行事が行われている意義は、決して小さくないだろう。全ての関係者に敬意を表したい。

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