top of page
  • 執筆者の写真高森明勅

安倍氏「仮病」退陣説?

更新日:2021年5月14日


衆議院事務局に長年勤め、議会運営と法律運用に精通する、元参議院議員の平野貞夫氏。

安倍晋三前首相の退陣の仕方に疑問を投げ掛けておられる。


「私は安倍首相が健康上の理由で辞任したことについては、憲法上の疑義が生じると考えている。安倍首相は辞任の理由として、持病である『潰瘍性(かいようせい)大腸炎の再発』

を挙げた。…しかし、実際に安倍首相が潰瘍性大腸炎であったかどうかは、誰にも分からないのだ」


「首相の就任が憲法上の手続きに則(のっと)って行われる以上、辞任も憲法上の手続きに則って行われなければならない。病気を理由に辞任する場合、少なくとも正式な医師団の診断結果を公表する必要があるのだ。新憲法となって以降、安倍首相以外で、首相が病気を理由に退陣した事例が3つある。


…憲法の常道として『首相が病気で退陣するときには速やかに医師団の説明を求める』という憲法運用の法理が形成されたはずだ」


「安倍首相退陣も、石橋(湛山)首相(昭和32年)、池田(勇人)首相(同39年)の例にならうべきである〔どちらも医師団が診断結果を公表。平成12年の小渕恵三首相のケースは、本人の急死後に医師団が記者会見―引用者〕。政府は医師団の診断結果を公表する必要があった。これは憲法上の義務だ」


「なぜ安倍政権は医師団の診断結果を公表しなかったのか? 『官邸は慶應義塾大学病院の医師団に辞任会見の同席を求めたが断られ、代わりに潰瘍性大腸炎の診断書を求めたが、それもまた断られた』――こんな内部告発があったとする情報もある。つまり、首相の病名について本人の説明と医師団の診断に食い違いがあったということだ。


もし潰瘍性大腸炎が再発しておらず、深刻な病状でないにもかかわらず、それを理由に辞任したのなら、立憲主義や民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題である」(『衆議院事務局』)


確かに、退陣後の安倍氏は、至って元気そうに見える。しかし、これは意外な指摘だろう。にわかに信じがたい気もする。だが、医師団の正式な診断結果の公表が無かったのは、事実だ(第1次政権の時は、同病院の主治医が独自の記者会見で、「機能性胃腸障害」の症状が見られる、とだけ述べた)。


それが前代未聞の異例だったこと自体、一般には殆(ほとん)ど気付かれていないのではないか。安倍氏の場合、普通なら嘘を吐(つ)くなんて、到底、考えられないはずの場面でも、彼ならあり得るかも知れない、と思えてしまうのが残念だ。


bottom of page