• 高森明勅

敬宮殿下のご誕生

最終更新: 1月24日



平成13年に東宮職(とうぐうしょく)御用掛(ごようがかり)を拝命し、皇后陛下(当時は皇太子妃)のご妊娠、ご出産に関わる医師団の責任者を務められた堤治氏。


敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下ご誕生を巡るエピソードを紹介されている。


「産科医として難しかったのは、雅子さまに入院していただくタイミングです。警備や報道への対応に約2時間を要すため、入院を決めても、すぐに病院にお越しいただけるわけではありません。


陣痛が始まってからでは遅く、あまり早いと生まれるまでに時間がかかってしまう。陛下は『一般の方と違う扱いはしていただかなくて結構です』とおっしゃってくださいましたが、そうはいきません。当時の最新技術を用いた試作品の『遠隔分娩監視装置』という“秘密兵器”を使って母子の状況をパソコンで逐一(ちくいち)確認し、タイミングを見計らって入院を決めたのです」


「雅子さまの日頃の努力の甲斐もあり、出産は大変スムーズに進み、産後すぐに雅子さまに愛子さまを抱いていただきました。雅子さまは笑顔で、優しい母親の顔をされていました。

生まれたての愛子さまを抱いた陛下は、少々肩に力が入っていたようです。

おふたりは目と目で何か通じ合うように見つめ合い、後に会見でおっしゃられたように『生まれてきてくれてありがとう』という喜びに満ちた表情をされていらっしゃいました」


「お誕生から数日経(た)ったころ、宮内庁病院の新生児室を訪れた陛下が、すやすやと眠られている愛子さまを見ながら『このコット(愛子さまが休まれているベビーベッド)は私が使っていたものなのです。覚えてはいませんけどね』と茶目っぽく懐かしそうに話してくださったことがあります。それは、一般的なコットと変わらないプラスチック製のものでしたが、質素でものを大切にする皇室の精神を垣間(かいま)見たような気が致しました」


「ご退院の挨拶の折、愛子さまを抱いた雅子さまが、『お産がとても楽しかった』とおっしゃったのが印象に残っています。その思いがけないお言葉に、私は頭が下がりました。それまで、私に妊婦さんに『お産は楽しいものだ』と言ったことはめったにありませんでした。

しかし、雅子さまがおっしゃったように『お産は楽しいもの』であり、そんなお産を目標にすべきなのだと認識を改めました。そのお言葉は、その後の産科医人生の励みになっています」


このようにしてご誕生になった敬宮殿下。

今年のお誕生日(12月1日)で二十歳(はたち)を迎えられる。

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