「即位の礼」とは?
- 高森明勅
- 2019年10月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年1月2日

皇室典範に次の条文がある(24条)。
「皇位の継承があつたときは、即位の礼を行う」これが御代替わりに「即位の礼」が行われる法的根拠だ。但し、誤解されがちだが、即位の礼というのは単一の儀式を指すのではない。以下の5種類の儀式(全て国事行為)の総称だ。
(1)剣璽等承継の儀
(2)即位後朝見の儀
(3)即位礼正殿の儀式
(4)祝賀御列の儀
(5)饗宴の儀
これらのうち、歴史的に重視されて来たのは(1)と(3)。
(1)は既に5月1日に行われた。皇室行事の「賢所の儀」とセット。皇位の「世襲」継承の正しさを、「三種の神器(じんぎ)」の受け継ぎを介して、確認する。
(3)は、天皇が国家の公的な秩序の頂点に位置される事を示す。その為に「高御座(たかみくら)」に昇られる。「日本国の象徴」というお立場に対応する儀式。「即位の礼」の他に、皇位継承に伴って必ず行われるべき儀礼として、大嘗祭がある。
特に法的な根拠はないが、皇位継承の歴史そのものに照らし、又、天皇と国民の関係性を総括すべき国家的な要請から、この度も当然ながら行われる。しかし、政教分離への配慮とは別に、国事行為は法的には内閣の意思による行為とされるから、天皇ご自身がお務めになるべき祭祀にはそぐわない。
よって皇室の公的な行事として行われる。これは、天皇が「民の稲」を皇祖に供え、ご自身も召し上がる祭儀。前近代には最も普遍的な生業であった稲作を通して、天皇が「国民統合の象徴」である事を証明する儀礼だ。