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執筆者の写真高森明勅

残念な野党議員の「先延ばし」論

更新日:2021年9月29日


残念な野党議員の「先延ばし」論

どうやら先日の緊急シンポジウムは、私らの予想以上の成果を、早々ともたらしたようだ。

その時、ご多忙の中をわざわざご参加戴いた国会議員の皆様には、深く感謝申し上げる。


その中でも、最も熱心にご参加下さったお1人が立憲民主党所属の某衆院議員。その熱意には敬意を表したい。但し、残念ながらその考え方には同意し難い。


同議員は、差し当たり皇位継承資格について、「男系」限定の“縛り”を維持したままで、女性にまで拡大するだけにとどめる、というお考えのようだ(女性宮家も“一代限り”)。


「男系でなければならないとも思わないし、絶対に女系が駄目だとも考えていない。だが、敬宮(としのみや、愛子内親王)殿下のお子様の世代の問題を今、敢えて解決する必要があるのか」というご意見。つまり、やがて行き詰まることがハッキリしている「男系」限定の縛りも、それに固執する人々がいる“当面の間”は、手を着けないでソッとしておこう、と。とても分かりやすい「先延ばし論」だ。


しかし、男系限定を“維持したまま”の小手先だけの制度改正では、率直に言って皇位の安定継承には何ら寄与しない。いくら女性宮家があっても、そのお子様方は(女系だから)誰も皇位継承資格をお持ちではないので。


にも拘(かかわ)らず、そのほとんど無効な方策の為に、内親王方にご結婚後も、国民としての自由も権利も断念して戴いて、女性宮家を立て、皇室に残って戴く。というのは、余りにも残酷で、身勝手な話ではないか。内親王方ご自身の“人生が懸かっている”という、厳粛な事実を見逃してはならない。


「一代限り」の女性宮家のご婚姻でも、皇室会議の同意は不可欠だろう。その場合、配偶者は皇族の身分を取得できるのか、どうか。しかし、皇族と国民で1つの世帯を営むというのは、明らかに不自然だろう。配偶者に皇籍が与えられるなら、皇族同士の間に生まれたお子様が、皇族の身分を持たないのも奇妙だ。


もしお子様が皇族になられるなら、皇族なのに、男女を問わず皇位の継承資格が“無い”ということも、ツジツマが合わない。男系限定の縛りを見直さないつもりなら、男系女性に継承資格を認めてもさしたる意味は無く、女性宮家も立てるべきではあるまい。今の皇室典範の各条文の趣旨を明らかにする為に法制局(当時、内閣法制局の前身)がまとめた「皇室典範案に関する想定問答」には、以下のようにあった。


「女系を認めないとすれば…他に男子の皇位継承者がいなくて女帝を認めることは、天皇制を一世だけ延命させるだけのことにすぎない」と。その通りだろう。


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