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  • 執筆者の写真高森明勅

菅首相の恩返し?

更新日:2021年1月21日

菅首相の恩返し?

菅(すが)内閣が発足した。私の周囲にはこんな声も。


「菅首相は皇室に“恩返し”をしなくちゃいけないね。だって、菅首相が首相候補の1人として名前が挙がるようになったのは、“令和”への改元の際に、内閣官房長官として発表役を務めたから。


あれで一挙に、全国の国民のほとんどに、その名前を知られることになった。普段は全く政治に関心が無いような人々にまで、顔と名前を覚えられて、“令和おじさん”という愛称で親しまれることになった。知名度では、安倍前首相以上になったとさえ、言えるんじゃないか。


それまでは、官房長官として実務は手堅くこなしていても、知名度はもう一つパットしなかった。失礼ながら、小泉進次郎環境大臣の足元にも及ばない、というのが実情だったはずだ。ところが、“令和”の発表で一躍、政界で最も有名な政治家になった。


勿論(もちろん)、首相の座を射止める為には、様々な条件が揃っていなければならないだろう。前任者の安倍前首相との信頼関係や、これまでの実績、自民党内の有力者との繋(つな)がりなど。


しかし、それらが全て揃っていても、全国民的な知名度が無ければ、首相へのハードルはかなり高かったはずだ。だから、『元号(“令和”改元)無くして菅首相無し』。その元号は『皇位の継承があった場合に限り改める』(元号法2項)ものだ。ならば『天皇・皇室無くして元号無し』と言える。だったら、菅首相は天皇・皇室に対して、“個人的にも”大いに恩返しをする義理(!)があるんじゃないか」と。


なるほど、そういう見方もあったか。その恩返しの方法は、長年の懸案だった皇位の安定継承に道筋を付けること以外には、あり得ないだろう。もしそれを成し遂げることができれば、菅首相は「令和時代の大宰相」として、後世から称(たた)えられるに違いない。


人の価値が“目方(めかた、物の重さ)”で計られるのではないように、政権の価値もその存続期間の“長さ”で計られる訳ではない。実際に何を成し遂げたかこそが重要だ。菅首相の奮起を期待したい。


なお、今の憲法下で改元の発表をした内閣官房長官は、菅氏の他に小渕恵三元首相だけ。

2人共、首相に上り詰められたことになる。


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