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  • 執筆者の写真高森明勅

「男系」限定のゆくえ

更新日:2021年1月20日

「男系」限定のゆくえ

皇室の「聖域」性を守りながら、皇位の安定継承を目指すには、どうすれば良いか? 

皇統問題の焦点は“この1つの問い”に集約できる。

前提となるのは、これまで皇位と宮家の「男系」継承に絶大な貢献をしてきた側室が不在で、非嫡出による継承の可能性が無くなったこと。従前、正妻たる方に男子がお1人も生まれなかったのは、天皇で約35%、宮家(4世襲親王家)で約54%、という高い比率だ。つまり、3代又は2代に1人以上の割合で、男子に恵まれておられない。


宮家の場合、側室出自の非嫡出による継承が可能でも、伏見宮の系統を除き、全て廃絶したという事実がある。


だからリアルに考えて、一夫一妻という現代では当然の条件下で、明治以来の「男系男子」という縛りをそのまま維持すれば、皇位の継承も宮家の存続も、“必然的に”行き詰まる他ない。現に、いわゆる旧宮家もかつては11家あったが、これまでに次々と廃絶している(新しく皇籍取得を検討する場合に対象となり得るのは賀陽〔かや〕・久邇〔くに〕・東久邇・竹田の4家のみ)。


仮に、皇室典範を改正して旧宮家系国民男性の何人かが(結婚という人生の一大事を介さないで)皇籍を取得したとしても(勿論、実際には至難だが)、上記の縛りを続ければ、「早晩行き詰まる」という結果に何ら変わりはない。


但し旧宮家系男性以外にも、国民の中には神武天皇の「男系」の血筋を(遥かに遠く)引く人は、多数いる。


なので、「男系」が途切れそうになる度(たび)に、果てしなく血縁が離れているそれらの人々を“次々に”皇室に迎え入れるという、突拍子(とっぴょうし)もない方策を、真面目に唱える人が出てくるかも知れない(ちなみに歴代天皇のうち、天皇からの血縁が最も遠かった26代・継体天皇は5世で、即位前でも皇族の身分のままだった。旧宮家系の対象者は20世以上の民間人)。


皇室と国民の大切な“区別”を曖昧にする旧宮家論の延長線上に、男系限定の最後の逃げ場として、いずれ浮かび上がって来かねない危うい提案だ(もっとも、憲法が規定する「世襲」にそこまで含まれ得るかは、もとより疑問)。


しかし、万が一にもそのような方策が採用された場合、それまで皇室と全く無縁だった一般国民が、いつでもやすやすと皇族になれてしまうという話なので、皇位の尊厳も皇室の「聖域」性も、たちまち失われることになろう。


国家秩序の頂点としての権威も、国民結合の中心としての求心力も、皇室に伝わる公正無私・一視同仁(いっしどうじん)の伝統精神の継承も、とても期待できない。


そのような皇室に対し、国民の多くが素直な敬愛の気持ちを抱くとは考えられない。

かくて、皇室の高貴さを守りながら、将来に向けて皇位の安定継承を目指す為に、実際に選び得る選択肢は、結局、“1つ”しかないことが分かるはずだ。

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