• 高森明勅

信頼を生む謝罪

信頼を生む謝罪


藤重太氏の『国会議員に読ませたい台湾のコロナ戦』(産経新聞出版)には、台湾指導者の発言をいくつか、忠実に収めている。


中でも、「リーダーの言葉の力」の重さを示す実例として引用されている、最高指導者の蔡英文総統の謝罪会見での発言は、深い印象を与える。


台湾で新型コロナの感染拡大が終熄(しゅうそく)に近づいたと見られていた4月中旬。

パラオでの訓練を終えて帰国した台湾海軍の軍艦「磐石(panshi)」の乗組員から感染者が発生し、国民は不安を抱くと共に、海軍への怒りを覚えていた。

その渦中(4月22日)に会見に臨んだ蔡総統は、次のように述べた。


「私は三軍(陸海空軍)の総帥(そうすい、最高司令官)であり、国軍のことは私のことであり、私の責任です。

国軍は平時から懸命に国家を守っています。

防疫についても数多くの支援(マスク増産など)をしてくれています。

しかし海軍の今回の任務において大きなミスを犯しました。

国民に新型ウイルス感染のリスクと不安を与えてしまいました。

ここに深く遺憾の意を表明します。


総統の責任は防疫をしっかり行い、国民に安心を与え、国を守ることです。

先ほど国防部(国防省)幹部と話をしました。

最速での真相究明と誤りの修正を求めました。

調査の完了後には、責任の所在をはっきりさせてから罰則を科すつもりです。

決してこの過失をかばいません。


…しかし、国軍は現在の台湾海峡の情勢に全力で当たっています。

国軍にはこれからも国防で重要な役割を背負ってもらう必要があります。

これからは、国家防衛と国民の安全をさらに守るように求めました。

国民も国軍を引き続き支援してくれることを望みます。

…これからも政府は引き続き努力を続けます。

皆さんの協力に感謝しています。

これからも一緒にがんばりましょう。ありがとうございました」


海軍の過失を自らの責任として真正面から受け止め、「過失をかばいません」と明確に言い切っている。

その一方で、国軍の貢献を称(たた)え、国民の変わらぬ支援を堂々と求めている。

この局面で、トップリーダーに何が求められているかを、知り尽くした対応だ。





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