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  • 執筆者の写真高森明勅

「10万円給付」の舞台裏

「10万円給付」の舞台裏

「10万円給付」の舞台裏


宗教の視点から社会を読み解くユニークな“宗教ジャーナリズム”誌『宗教問題』(小川寛大編集発行人)。

毎号送って戴いている(季刊)。

最新号(30号)には、新型コロナへの政府の対応の1つとして、国民1人当たり一律10万円の特別給付が実施された“舞台裏”についてのレポートが載っている(中山雄二氏執筆)。

政府は既に所得減収世帯に限定した30万円の給付を決めていた。

それが実施の直前に引っくり返されたので、驚いた人も少なくなかったはずだ。

この方針転換に公明党が大きな役割を果たしたことは、広く知られているだろう。

その公明党の動きの背後には勿論、支持母体の創価学会の存在が。

レポートの一部を紹介する。


「当初、公明党は決して政府の方針を全否定していたわけでもない。

…しかしその流れが変わったのは、4月9日に行われた公明党と創価学会幹部による意見交換会だったという。

『その場で創価学会の政治担当・佐藤浩副会長が、30万円給付案を強く批判したらしい。

理由の1つは全国民の2割程度しか支給されないという点。もう1つは、これに関する与党内での議論がないまま決められた点だった。

給付案は財務省と官邸の官僚が中心に進めていたもので、佐藤副会長の盟友であり、かつ学会にとって政府への強力なパイプである菅義偉官房長官が蚊帳(かや)の外だった。菅長官をないがしろにすることは、創価学会をないがしろにすることと同じ。

その思いを佐藤副会長は、公明党にきっちり示したということだ』


(…政治部記者)…公明党も閣議決定前に了承していた手前、安倍首相に対して手の平を返すことには躊躇があったようだ。

ただ一方このとき、全国に三千人いる公明党の県議や市議など地方議員のもとには、支持者たる地域の創価学会員たちから30万円給付案に対する猛烈な批判が寄せられていたという。

…そんななかで公明党の背を押したのが、自民党の二階俊博幹事長だった。

…(4月15日)山口(那津男)代表は官邸を訪れ、安倍首相に10万円給付案を直(じか)談判する。

…翌16日、山口代表は安倍首相に電話を入れ…『私も首を賭けてお願いしている。決断しなければ共倒れになる』と、退路を断って要求した。


そのころ国会では、公明党が衆院の予算委員会と議院運営委員会の理事懇談会への出席拒否を通告した。

与党の立場で審議拒否をチラつかせたのだ。

…『遠山清彦財務副大臣を閣内から引きあげ、赤羽一嘉国交大臣は閣議で政府案への署名を拒否する』とまで述べたらしい。

これにより安倍首相は30万円給付案を取り下げ、一律10万円給付案へ舵を切らざるを得なくなった」


公明党がここまで強硬だったとは知らなかった。

創価学会という宗教団体が持つ国政への影響力の大きさを、改めて見せつけた一幕だった。

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