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  • 執筆者の写真高森明勅

「養子」という困難 

更新日:2021年1月26日


結婚を強制?

政府が有識者に提示した旧宮家系国民男性の皇籍取得案には、現存の宮家の「養子」に入るという選択肢があったようだ。現行の皇室典範では明文の規定で否定されている(9条)。

これは明治の皇室典範の考え方を踏襲した規定だ。そうした事情もあって、内親王との結婚というおよそ非現実的かつ非人道的な選択肢よりも、“更に”後ろに回されていた。


養子と言っても、本人の意思を確認して、資質なども見極める必要がある。だから、未成年者は当然、対象から外れるだろう。果たして、養子に「手を挙げる」人物はいるのか? 


一旦、宮家の養子に入った後、本人が養家から離れることを強く希望した場合、どう対処するのか? 


私の個人的な体験に照らしても、民間の国民同士の養子縁組みでさえ、養家との折り合いが良くない等の理由で、関係を解消したケースをいくつも見聞している。これが、民間から皇室への養子縁組みとなると、問題は一層複雑だろう。そもそも、現存の宮家の側のご意向はどうなのか? 


法的に養子を押し付けても、受け入れる側に十分な同意がなければ、決して望ましい結果にはならない。


既に、お2方の皇位継承資格者がおられる秋篠宮家が、対象から外れるのは、改めて言うまでもあるまい。その他、ご高齢のご夫妻だけの常陸宮家、三笠宮家に合流された故・寛仁親王のご家族、現在は母宮とご長女だけの高円宮家。


これらのどの宮家が養子をお迎えになるのか。未婚の女王がいらっしゃる宮家に、未婚の旧宮家系男性が結婚を介さないで養子として入る、という手順には不自然さが否めないだろう。かと言って、ご高齢の常陸宮家に新しく養子が入るというのも、余り現実的ではないのではあるまいか。


しかも、養子に入った男性には皇位の継承資格を認めるのか、どうか。昨日まで民間の一国民だった人物に継承資格を認めるのは、違和感が強いはずだ。しかし、継承資格が“無い”父親の下に生まれた子にだけ、継承資格を認めるというのも奇妙だろう。


更に、養子に入った男性は、その立場が変則的なだけに、普通の皇族よりも結婚が難しくなる可能性がある。「男系」維持の為(!)に養子に入った男性が、もし未婚のままだったり、男子を儲けることが出来なかったりしたら、恐らく想像を絶した“風圧”に晒されることになる。政府自身が「結婚」案より“後ろ”に回した「養子」案。やはり至難な選択肢と言う他あるまい。

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