• 高森明勅

天皇陛下の前の「嵐」



天皇陛下の前の「嵐」 昨年の「祝賀御列の儀」の前日(11月9日)に、皇居前広場で民間行事の「天皇陛下の御即位をお祝いする国民祭典」が行われた。僅か目に付く残念な点があったものの、全体としては思い出に残る素晴らしい行事だった。


クライマックスは、天皇・皇后両陛下のお出ましを仰いでの奉祝曲(「Ray of water」作曲・菅野よう子氏)。


同曲は3部に分かれ、1部(「海神」)はオーケストラの演奏。2部(「虹の子ども」)は全盲の天才ピアニスト・辻井伸行氏の演奏。3部(「Journey to Harmony」作詞・岡田惠和氏)は国民的人気アイドルグループの「嵐」が歌った。


奉祝曲をお聴きになった皇后陛下が思わず涙を拭われる場面もあった。この祭典の「祝賀式典」の総合演出に当たったのが元NHKドラマ番組ディレクターで演出家・映画監督の黛りんたろう氏。作曲家だった故・黛敏郎氏のご子息だ(私はご尊父の敏郎氏とは若干の接点があった)。


同氏がインタビューに答え、式典の舞台裏を語っておられる(『日本の息吹』2月号)。その一部を紹介する。


「黛 今回、嵐に依頼するにあたり、彼らの東京ドーム公演を見ましたが、ファンがすごかった。多くの若者たちに支持される理由って何だろうと考えました。嵐の皆さんは今の若者たちー平成に青春期を過ごした若者たちが持っているいい意味での素直さ、ピュアさを持っている象徴的なグループなんだと思ったんです。実際にリハーサルを含めて彼らの姿を目の当たりにして一層その感を強くしました。


ー具体的にどういう場面で感じられたのでしょうか。


黛 この奉祝歌をどう歌うのか、どのように歌えば歌詞に込められた思いを両陛下に、そして聴衆に伝えることができるのか、ということをかなり悩んだようで、『話をしたいので、スタジオに来てください』と呼ばれまして、収録中のフジテレビの湾岸スタジオに行きました。本番の合間に膝を交えていろいろな会話のキャッチボールをしました。そのときに彼らは心で歌う人達だということが分かりました。どういう気持ちで歌えばいいのかと真剣に悩んでいた。そこで、作詞者、作曲者の思い、式典全体のコンセプト、演出の方向性などについてお話ししました。それで納得して『今のお話を踏まえて僕らなりにやってみます』と。このやり取りのなかで、国民的な支持、人気を得ているグループが背負っている責任の重さ、覚悟を垣間見た気がしました。


ー そういう努力があったからこそ伝わったんですね。嵐の歌唱に感動したという声は多かったです。そもそもなぜ嵐に? 


黛 若くて品性があって、国民的な支持のある歌手は誰かということで、早くから名前が上がっていたのが嵐でした。


ー その結果、一般の応募が47万人。


黛 やはり大正解だったと思いますね。作詞、作曲、オーケストラ、ピアノ、歌唱とすべてがよかった。何より両陛下にお喜びいただけたことが。皇后陛下が涙を拭われたお姿を見て、『やってよかった』と素直に思いました。


ー 皇后陛下のお姿に『胸に迫るものがありました』と桜井翔さんが語っています(『日刊スポーツ』)。大野智さんは『前にいらっしゃるのがおふたりだけだという、すごく不思議な空間で。こんなことが起こっていいのか』と実感を話しています(同)。


黛 両陛下に捧げた奉祝曲を、両陛下がお喜び下さったということがすべてを物語っています。


ー …(祭典の中で)両陛下からお言葉があり、さらには祭典終了後、主催者、関係者へのお言葉を賜りました。


黛 レセプションで宮内庁長官から伝達いただき、感銘しました。まさか我々にまでお言葉を賜るとは夢にも思いませんでした。半年間、この祭典に賭けてきてよかったなと心から思いました」


ー関係者のご労苦に改めて敬意を表する。

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