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  • 執筆者の写真高森明勅

信頼と強制


信頼と強制

信頼と強制


元最高裁判事で皇室法の第一人者の園部逸夫氏。これまで『皇室法概論』『皇室制度を考える』などの著書がある。この度、新しく『皇室法入門』(ちくま新書)を刊行された。法的領域に限らず、皇室に関心を持つ人なら先ず読んでおくべき基本文献だろう。


その一節。


「皇室の諸制度は…制度化が困難な点もあり、細部は運用に委ねられるなど制度として不安定な面を持つことも否定できない。しかし他方で現行制度制定以来これまで皇室の諸制度が大きな問題もなく維持されてきたことも事実である。このように制度が順調に維持されてきたことの根本には、皇室制度が皇室と国民との信頼関係を前提として定められ、かつその前提が持続していることにあると私は受け止めているが、このことは皇室制度の大事な特色であると考えているところである。


皇室と国民との信頼関係の基本は次の点にあると考えている。

すなわち、①国民が、皇室制度は国家にとって必要であり、また、大切な制度であるということをよく理解した上で、そうした制度を担われている皇室に感謝し敬愛の気持ちを持つこと②皇室が、国民の皇室に対する期待や希望を受け止め、それらに対して様々な形でお応えになることであり、皇室と国民とが共に歩んでいくということが重要であると考えている。


もちろんこうした信頼関係の基本にある双方の在り方は強制されるようなものであってはならず、むしろ強制されるような状況は信頼が危うい状況であり、強制されずに維持されることが皇室制度安定の基礎であると言えよう」


傾聴すべき指摘だ。

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