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  • 執筆者の写真高森明勅

「譲位」は憲法違反?

負け犬の遠吠えか。


或いは、引かれ者の小唄か。


ご譲位に終始、反対していた麗澤大学教授の八木秀次氏。 奇妙な文章を書いていると、人から教えられた。


『正論』2月号に載った短文だ。

一応、立ち読みしてみた。


要は、保守系が好んで「譲位」という言葉を使っているのは、憲法上、妥当ではないから、「退位」で統一せよ、という主張。

譲位は、天皇のご意思を前提とした言葉で、国政権能を否定した憲法に抵触しかねない、と。


だが、天皇陛下をはじめ皇后陛下も秋篠宮殿下も、「譲位」という言葉で統一されている(皇太子殿下のお誕生日は来年なので、ご譲位を可能にする法整備後、まだこの事について発言される機会はない)。


八木氏は、天皇陛下をはじめ皇室の方々の言葉の選び方が間違っていると、婉曲に訴えたいのか。

それとも、皇室の方々のご発言は、端から無視しているのか。

ひょっとして、皇室の方々のご発言自体を知らないのか。

文中、横畠内閣法制局長官の発言を金科玉条のように振り回している。 しかし、内閣の法律顧問に過ぎない内閣法制局が間違った見解を示したら、それを糺すのが専門家や識者の責務。 ご譲位にご本人のご意思が介在するのは当然だ。

むしろ、それが「起点」とならなければ、“必ず”強制退位となる。

だから特例法でも、それを避ける為に、事実上の“要件”として、以下のように書き込んだ。


「天皇陛下が…今後これらの御活動を天皇として自ら続けられることが困難となることを深く案じておられること」(第1条)。


“主語”は「天皇陛下」。


紛れもなく、陛下の“ご意思”が前提となる事が明記されている。


八木氏は、法律の条文を読み取る力がないのか。


同法では、これが“最初の”要件とされ、その上で「国民は…天皇陛下のお気持ちを理解し、 これに共感していること」(同条)という、二番目の要件が挙げられている。


ここでも「天皇陛下のお気持ち」に言及し、天皇のご意思が“起点”である事実を再確認している(ちなみに、三番目の要件は「皇嗣である皇太子殿下は、57歳となられ…」)。

従って、天皇のご意思を前提とした「譲位」という言葉を使うな! との主張は、「退位」という語を採用している特例法に照らしても、成り立たない。 八木氏は、ご意思が介在すると、恣意的な退位や強制退位などで皇位の継承が不安定化する、とも言う。


だが、ご意思“だけ”による制度化は、初めから誰も予想していない。

私らが提案し、特例法(附則第1条第2項)に盛り込まれた“皇室会議の関与”によって、ご意思を起点としながら、いわゆる「恣意的な退位」の可能性に対処し得る。


又、ご意思が介在すれば、「強制」退位の可能性が出てくる、というロジックは理解に苦しむ。むしろ逆。八木氏は論理的な思考力が無いのか。 それとも妄想に囚われているのだろうか。 天皇が自らの地位から退かれる場合まで、ご本人のご意思の介在を全く排除するのは、憲法が要請するところではない(高橋和之氏、長谷部恭男氏ら)。 八木氏には、戦後憲法学の“正統”への劣等感でもあるのか。


「天皇はメクラ判を捺すロボットであるべきだ」

とした旧式の宮澤憲法学に、高橋氏らその正統の継承者より、もっと盲目的な忠誠(!)を捧げているように見える。

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