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傍系の皇嗣には「立太子の礼」類似儀式は無いのが本来だった

  • 執筆者の写真: 高森明勅
    高森明勅
  • 2 分前
  • 読了時間: 4分
傍系の皇嗣には「立太子の礼」類似儀式は無いのが本来だった


令和2年11月に秋篠宮殿下のお立場に関わる「立皇嗣の礼」という“前代未聞”の儀式が行われた。


これは国事行為つまり「内閣の助言と承認」=内閣の意思による行事だった。


しかし、皇室典範の制度のもとでは、「皇太子」や皇嗣などは典範自体の規定によって、言わば自動的にその地位につくのであって、特段の儀式を必要としないし、儀式によってその地位がことさら強化されたり、固定化することもない。


皇太子の場合に行われる「立太子の礼」は、それ自体が伝統的な儀式であり、皇太子は次代の天皇になられることが確定したお立場なので、その事実を改めて広く宣明することには、意味がある。


これに対して、傍系の皇嗣はこれまで繰り返し強調して来たように、その時点で皇位継承順位が第1位であるに過ぎない。


「直系の皇嗣」が現れた瞬間に順位が変更され、皇嗣はでなくなる。


よって秋篠宮殿下のケースを除いて、過去に立太子の礼と似通った「立皇嗣の礼」なる儀式が行われた前例はないし、そもそもこのような儀式を行う意味が明らかでない。


これについて、帝国憲法の標準的な教科書だった美濃部達吉『憲法撮要❲改訂第5版❳』(昭和7年)に以下の記述がある。


「立儲(ちょ)ノ礼(=立太子の礼)ハ傍系ノ皇族(が)皇嗣タル場合ニ於テハ行フコトナシ」(220ページ)


「傍系」の皇嗣の場合は立太子の礼類似の儀式は“行わない”ことを、わざわざ明記している。


政府が敢えて行った立皇嗣の礼には、やはり無理があったと言わざるを得ない。

逆に言うと、現行の“欠陥ルール”のもとでの皇位継承順序をあたかも「忽(ゆるが)せにしてはならない」かのように思わせる、心理的なトリックとしか考えにくい。


同じ美濃部達吉の現憲法の解説書『日本国憲法原論』(宮澤俊義·補訂、昭和27年)には、次のような記載もある。


「傍系の皇族が皇嗣たる場合は特別の称号を用ゐない」(223ページ)


先の『憲法撮要』(220ページ)にも、これと同様の指摘があった。


秋篠宮殿下ご自身が歴史上に先例があった「皇太子」類似の称号(皇太弟など)を辞退されたことが伝えられている(御厨貴氏の証言「朝日新聞デジタル」令和2年11月8日配信)。


だが近代以降は、もともと傍系の皇嗣はそのような称号を持たれないのが、当たり前だった。


むしろ、そのような称号を敢えて想定していた政府サイドの方が、不見識だったと言える(これも印象操作を狙って空振りだったか)。


「立太子の礼」類似の儀式も行わなければ、「皇太子」類似の称号も持たれない。

それが傍系の皇嗣というお立場の本来の在り方だった。


直系の皇嗣(皇太子·皇太孫)とは、それほど厳格な違いがある、ということだ。

それを誰よりも自覚しておられるのは、恐らく秋篠宮殿下ご自身だろう。


憲法上、国政権能を持たれないお立場なので、さすがに天皇への内閣の助言と承認による立皇嗣の礼までは拒否できなくても、ご自身への「皇太子」類似の称号を特例法に盛り込むことは固く拒絶された事実が、その辺りの消息を明瞭に物語っている。


そもそも殿下が、“傍系の証”と言うべき「秋篠宮」という宮号に、強くこだわっておられる事実も見落とせない。



▼追記

①漫画家の小林よしのり氏が脳溢血で入院されていたが、無事に退院された。

重い後遺症も残らなかったようで、安堵した。

お身体に留意され、ますます活躍されることを祈り上げる。


②9月7日、悠仁親王殿下の成年式に関連して、英国「エコノミスト」誌の取材を受けた。

私の8月8日のブログ「皇室の3つの未来図、日本人はどれを選ぶか」が目に止まったらしい。


③9月10日、プレジデントオンラインの連載「高森明勅の皇室ウォッチ」の今月の記事が公開。

悠仁殿下の成年式を巡る謎解きを試みた。

▼記事はこちら


④「岩戸開き」9月·10月号に作詞家の森由里子氏らとの鼎談記事が掲載された。


⑤兵庫県の高校生から「神道」の本質に関わるような面白い質問が届いた。

学校の「総合的な探究の時間」の探究活動の一環だとか。

なるべく分かりやすく“探究”のヒントを書いて返信した。


⑥今年3月に続いて、来年1月にも皇居勤労奉仕を行えることが決まった。

今回の団長のM君から連絡を貰った。


コロナ禍で受け入れが一時中断となり、再開後はそれまでの4日間から3日間に短縮するケースもあって、今年の我々のご奉仕も3日間だった。


しかし、来年のご奉仕は4日間の可能性があり、その場合は皇居だけでなく、赤坂御用地の清掃奉仕もできそうだ。既に今年、私が事前勉強会の講師を務めた奉仕団では、4日間のご奉仕で赤坂御用地の清掃を行った報告を受けている。


その時には、秋篠宮同妃両殿下からご会釈を賜ったそうだ。

両殿下は、とても気さくでいらっしゃり、終始笑顔でいらしたとか。


この点、昨年の拙著『愛子さま 女性天皇への道』で「少なくとも現状では秋篠宮殿下はこのようなご会釈をなさっておられないようです」(133ページ)と書いたのは、今後は訂正が必要だ。


来年には、ひょっとして私自身も天皇陛下及び秋篠宮殿下のご会釈を賜るかも知れない。

そのご奉仕に向けて、くれぐれも心身の健康に気を付けなければ。


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